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『リンダ リンダ リンダ』の「普通」という美徳
昨年『カラオケ行こ!』が大ヒットした山下敦弘監督の代表作の1本『リンダ リンダ リンダ』が4K版となって公開される。
製作から20年が過ぎた名作は、果たして今も輝いているだろうか。それとも時代の推移と共に経年を感じさせるものになっているのだろうか。つまり、風格か、風化か。
否。どちらも否である。
青春映画として語られがちな本作だが、そもそもキラキラした青春群像などではない。
最後の文化祭。バンドが空中分解し、残された3人の女子高生は、顔見知り程度の韓国人留学生に声をかけ、THE BLUE HEARTSの名曲“リンダ リンダ”のコピー演奏に挑むーー
あらすじを書けば、さぞ熱い物語が繰り広げられると想像するだろう。メンバーたちが激しくぶつかり合い、ライバルとの睨みあいがあり、邪魔が入ったり、苦難があったり、そういう諸々を乗り越えて、感動のクライマックスと涙のラストが待っている……というようなハイテンションの映画ではないのだ。
カタルシスはあるにはあるが、いわゆる能天気な高揚感ではない。エモいと言えばエモいが、独特のエモさであり、ど真ん中ど直球のエモーションではない。かと言って、クールなわけでも、脱力しているわけでもない。あるいは、アメリカ映画によくある、キュートでお気楽な(でもちょっとダウナーな)インディーズバンド映画とも全然違う。もっと、普通なのだ。いや、普通すぎるくらい普通であることが、映画『リンダ リンダ リンダ』最大のオリジナリティであり、最良の美徳なのである。
