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世界を揺るがすKNEECAPは民族ファーストの過激派か、新世代ポップアイコンか?

2025.8.2

#MOVIE

移民排斥とは正反対にあるKNEECAPの思想

最後に、曲解を招かないよう言っておかねばならないのは、アイルランド島の統一を望むKNEECAPのメッセージは日本を含む世界で流行っている右派の移民排斥とは正反対であるということだ。彼らは確かに自分たちの文化や歴史に誇りを持っているが、一方でアイルランド系移民の数は世界有数で、アイルランド島の人口700万人の10倍程度いるとされている。移民排斥やゼノフォビアに対して彼らは同調しないし、「吐き気がする」とDJプロヴィはインタビューに答えている。伝統文化の再発見を、「移民のせいで伝統が壊される」と婉曲させる一部の日本人は彼らを見習ったほうがいい。そのためにやるべきことは至って簡単なのだから。それは「KNEECAPを観察せよ。」ということ。

映画『KNEECAP/ニーキャップ』場面写真

現在英語圏で出回っているほとんどすべてのインタビューにおいて話が音楽制作よりも政治的な方向に走っている彼ら。しかし「サウス(ダブリン)でアイルランド語を話しても問題にならないが、ノースで話すと政治的になる」と言いつつ決して口を閉ざさないからには、彼らもそれを覚悟しているし、利用しているのだろう。ハイプを乗り越えて26+6=1(※)の無理難題を証明するO’ラマヌジャンになるか、それとも「こいつらは反ユダヤ主義者だ」というガスライティングに負けてロマン主義の社会正義戦士で終わるか。おそらく彼らはどちらも望んでいないだろうが、これまでのポップカルチャーの歴史を見ていれば、意図しない未来に引き摺り込まれることだけは確定している。

※アイルランドの26地域とイギリス占領地域の6つの地域を合わせて1つのアイルランドになるという意味

映画『KNEECAP/ニーキャップ』場面写真

映画『KNEECAP/ニーキャップ』

監督・脚本:リッチ・ペピアット 
製作:トレバー・バーニー、ジャック・ターリング 
撮影:ライアン・カーナハン 
音楽:マイケル・“マイキー・J”・アサンテ
出演:モウグリ・バップ、モ・カラ、DJプロヴィ、ジョシー・ウォーカー、マイケル・ファスビンダー
2024年/105分/イギリス・アイルランド/原題:KNEECAP/カラー/5.1ch/2.35 : 1/R18+
© Kneecap Films Limited, Screen Market Research Limited t/a Wildcard and The British Film Institute 2024

日本語字幕:松本小夏 
後援:アイルランド大使館 
配給:アンプラグド 
公式サイト:https://unpfilm.com/kneecap/

<ストーリー>
北アイルランド、ベルファストで生まれ育ったドラッグディーラーのニーシャ(MCネーム:モウグリ・バップ)と幼馴染のリーアム(MCネーム:モ・カラ)。麻薬取引で警察に捕まったリーアムは、英語を話すことを頑なに拒み、反抗的な態度を貫いてた。そこに通訳者として派遣された音楽教師のJJ(MCネーム:DJプロヴィ)が、リーアムの手帳に綴られていたアイルランド語の歌詞を発見。その才能に目をつけ、3人はアイルランド語の権利を取り戻すべく、アイルランド語のヒップホップを始めることに。

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