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君島大空が迎えた「ひとつの区切り」とは。『午後の反射光』からの6年を振り返って語る

2025.5.15

#MUSIC

「本日は僕のひとつの区切りになる公演になります」。

少し前のことになるが、2025年1月、LINE CUBEで行われたワンマン公演『笑う亀裂』の前夜、君島大空はこんな言葉をXに投稿していた。このインタビューは最新EP『音のする部屋』のためのものであったが、まず本作にも深く関わっているであろう君島大空が「区切り」と表現した言葉の意図について話を聞いている。

「区切り」とは、君島大空が音楽を作り続けてきた「動機」と密接に関係しているようだが、ここではその「動機」に具体的に立ち入ることは避けている。なぜならそれは、この音楽の可能性、聴き手の関係性を閉ざしてしまうことになりかねないからだ。その代わりにデビューEP『午後の反射光』(2019年)からの6年間、君島大空という音楽家がどのような音楽を、いかなる意図から生み出してきたのかを振り返った。

鍵となったのは“午後の反射光”と“Lover”という2つの楽曲。君島大空はその音楽を通じて、一体何を表現してきたのだろうか。

※NiEWでは後日、君島大空『音のする部屋』の全曲解説を公開予定

君島大空が迎えた「ひとつの区切り」とは何だったのか

―LINE CUBEのワンマンは君島さんにとって「ひとつの区切り」という位置づけだったとのことですが、この言葉を使ってどんなことを伝えたかったのでしょうか。

君島:……難しいですね。今の活動の仕方って、『午後の反射光』(2019年)を出した頃に思い描いたものとは全く違っていて、LINE CUBEでバンドでワンマンやって、しかもソールドアウトするとは全然想像してなかった。伝えたいことも最近変わってきていると思うし、そういう節目でもあったと思います。

―あの日のライブは、小曲的なイントロダクションを経て“午後の反射光”で始まり、“Lover”で本編が締め括られました。ライブの内容から、君島さんのデビューEPの表題曲“午後の反射光”から、あの当時の最新曲“Lover”に至るまで期間を「ひとつの区切り」としているのかなとも思ったんです。

君島:そうですね。

―そうやってひとつの節目を迎えた今、君島大空のデビューからの6年間を改めて共有しておいたほうがいい気がします。

君島:僕も最近、めっちゃそのことを考えます。

君島大空(きみしま おおぞら)
1995年、東京都青梅市生まれ。ソングライター/ギタリスト。ギタリスト/サウンドプロデュースとして、吉澤嘉代子、アイナ・ジ・エンド、ゆっきゅん、細井徳太郎、坂口喜咲、RYUTist、adieu(上白石萌歌) 、高井息吹、など様々な音楽家の制作、録音、ライブに参加。2019年 EP『午後の反射光』を発表後から本格的にソロ活動を開始。2025年3月、4th EP『音のする部屋』をリリースした。

―まず前提の確認をすると、『午後の反射光』から1stアルバム『映帶する煙』(2023年)までは、おそらく君島さんの中に明確にある「音楽を作る『動機』」が純度を保ったまま楽曲となってこぼれ落ちてくる、というような作り方をしていましたよね?

君島:『映帶する煙』まではかなり地続きに続いてます。自分の遍歴の振り返りというか総括で、アルバムの半分ぐらい占めている昔の曲も出すならこのタイミングってことがあったので。

―その9か月後に出した2ndアルバム『no public sounds』(2023年)で、そことは違う可能性が見えてきますね。

君島:『no public sounds』は、作る理由を自分のことにしなかったんです。それまでは作る理由が全部自分の過去や自分の周りのことや気持ちに紐づいていたけど、この作品は友人の作った映画が制作のきっかけ、ブースターになっていて、その中で友達の音楽に刺激を受けてできた曲があったり、Skrillexみたいな曲を作ろうと思って四つ打ちの曲(“˖嵐₊˚ˑ༄”)を作ってみたり。

君島:それ以前は、そういう気楽さで制作に取り組むことに対してすごく嫌悪感があったんです。僕はかなりこねくり回すタイプで、特に『午後の反射光』のときは「パッと作る曲に価値があるのか」って思っていたから、1曲に何年もかけるのが当たり前だった。

―君島さんがそういうスタイルだったのは、音楽を作る「動機」自体が、君島大空というひとりの人間、その生きてきた時間そのものに密接に関係しているからでは、と思うんです。

君島:そうだと思います。自分が音楽を作る「動機」そのものにタッチして、人には見せられないものをポップスとして出すことにすごく抵抗があって。そこまで自分の心を削いで音楽を作ることは果たしていいことなのかってことも思っていたし、同時に低カロリーで「いい歌っぽいもの」を作って生きていくのは嫌だってこともずっとありました。

―そういう葛藤の中で、「動機」そのものを明かすことはなく、それでも君島さんはその音楽を聴き手が自分のものにしながら受け取れるようにも作ってきましたよね。

君島:うん。僕はそういう秘匿の仕方をずっとしていると思います。

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