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厚海義朗、Yatchi、吉居大輝――新作を彩る素晴らしいプレイヤーたち
―参加している人たちは基本的にこれまでのキャリアの中で交流があった人たちで、井戸さんがプレイヤーとして素晴らしいと思っている人たちにお声がけをしたわけですよね。
井戸:そうですね。ベースの厚海(義朗)さんだけお会いしたことがなかったんですけど、ダメ元で頼んだらOKしてくださって。厚海さんのことはもともと好きで、ceroやGUIROも見てたし、それでお願いしました。簡単なガイドだけ送って、自由に弾いてもらって、その中から選ばせてもらった感じですね。厚海さんは3曲目、4曲目、7曲目に参加してもらってて、“Living”は最初シンプルな4つ打ちやったんですけど、これもかなり変わってると思います。
―“Living”はアッパーで、ちょっとプログレッシブなアレンジになっていて、最近のルイス・コールの作品を連想したりもしましたが、冒頭のファンファンさんのトランペットからすごくインパクトがあって。あの部分はエディットをしたわけですか?
井戸:あれは頑張ってやってもらいました。編集はしましたが、複数のテイクを繋いでいる感じです。レコーディングしたのが夏で、暑かったのもあって、管楽器は温度に敏感やから、「もうダメかも」ってなったので、あまりにも無理のあるフレーズは作らないように気をつけようと思いました。
―ムーズムズのメンバーで、折坂悠太重奏にも参加するYatchiさんのピアノも非常に印象的です。“Into a cave”は即興で弾いてもらった中から選んだそうですね。
井戸:メインのテーマはこちらで考えましたが、それ以外は8曲目の“沫”でのインプロから転用したフレーズです。Yatchiさんのピアノの存在はすごく大きいですね。どれを聴いてもめちゃくちゃよかったので、「この流れならこれやな」みたいな感じで、どんどん編集していきました。
―ピアノはアルバムのカラーを担っている感じがしますよね。
井戸:アルバムの半分くらいはYatchiさんに作ってもらった、と言ってもよいかもしれないです。“沫”も最初はシンプルなドラムのパターンがあって、そこにこの歌が乗ってたんですけど、Yatchiさんのピアノを生かすためにテンポをゆっくりにして、ドラムも抜き差ししたので、Yatchiさんのピアノありきの曲ですね。
―“沫”は厚みのあるコーラスも印象的です。
井戸:歪んだギターでクライマックス感を演出することもできたんですけど、ピアノの印象が薄れるのを避けるために採用しませんでした。でも自分の声やったら大丈夫かなって。レコーディングのときにブースでピアノを弾いてもらってるのを椅子に座って聴きながら、すごい贅沢をさせてもらってるなと思ったので、その感じを壊したくなかったんです。

―幽体コミュニケーションズの吉居大輝さんは今回の参加メンバーの中だと比較的若めだと思いますが、もともとお知り合いだったんですか?
井戸:2022年にスーパーノアで初めて共演して、レコ発にも出てもらって、そこからの関係ですね。吉居くんは3曲目と6曲目に参加してもらったんですけど、アプローチが面白かったです。飛び道具的なエフェクトを使いながらも、しっかりリズムギター的な役回りもするという。西田修大さんが好きらしくて、僕は西田さんとは何度か共演している世代なんですけど、自分と同世代の人を「好きなギタリスト」として挙げる人が出てきたのかっていう、なぜか自分が感慨深くなりました。
―今の西田さんは多方面で活躍してるから、もう吉田ヨウヘイgroupだったことを知らない人もいるでしょうからね……。アルバムに参加してるのは基本的に近い世代が多いと思うけど、若い人が参加することでまた違う感性が入る面白さはありますよね。
井戸:そうですね。これこそまさに自分じゃ弾けないし、思いつかないって感じでした。人に弾いてもらうのはすごく贅沢な経験で、「これもいいし、これもいいなあ」みたいな、感謝の気持ちを感じながら制作をしてました。
―感謝の気持ちを感じつつ、でもそれをぶった切ったり、エフェクトをかけたり(笑)。
井戸:確かに(笑)。「ほんまに感謝してる?」って言われそうですけど、でもほんまに感謝してます。
