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世界各地どんな場所、どんなときも変わらない客席一人ひとりへの想い
─この2025年はとにかく凄まじいペースで海外ツアーを回ってますよね。ここまでのツアーを終えてみて、いかがですか。
青葉:シンプルにすごくおもしろいですね。全部日本語で歌ってますから、(歌詞の意味が)通じていないことも多いと思うんですけど、そういうことをまったく気にしないで来てくださるわけですし。
お客さんみんなが楽しんでいる様子がありありと伝わってきて幸せでした。日本に比べてもかなり年齢層が低くて、いつも刺激をもらっていますね。海外ツアーを始めたばかりの頃は、ひとりぼっちのときもありましたけど、やっと今の体制が組めるようになりました。
─えっ、ひとりで回ってたんですか?
青葉:そうです。楽器と機材と物販を手持ちして、電車で移動したこともありました(笑)。そのときはしんどかったです。爪も割れるし。
─かなり慌ただしいツアーだと思うんですけど、心の平穏を保つために意識していることはありますか?
青葉:私にとってはお客さんと顔を合わせることが一番守られている状態なので、ステージに出ることが平穏につながるんです。一番の理解者たちと一緒にいられる時間というのは、私にとってシェルターに守られているような感覚なんですよ。音楽を楽しみにしてくれている人たちと過ごす時間が何よりも栄養になるんです。
─そうした感覚って昔からあるものなのでしょうか?
青葉:昔は「自分」対「音楽」という感覚しかなかったですね。楽器に向かって音を奏でている時間が一番プロテクトされているという感覚は確かに変わらないですけど、今は「自分」対「他者」という感覚になっているかも。
私たちはお客さんのことを「ウォールフラワー(壁の花)」と呼んだりしますけど、一番後ろの壁にもたれかかってひとりで聴いてる子を見つけると、かつての自分の姿を投影したりするんですよね。誰もしゃべる人がいないんだけど、それでも音楽に触れたくてライブに行っていた自分と重なるんです。
「それぞれの日常のなか、アルバイトや仕事をして、頑張ってチケットを買ってくださったんだろうな、本当にありがとう、この時間を大切なものにしよう」という気持ちになりますね。
─「自分」対「他者」という意識が芽生えてきたきっかけは何だったのでしょうか。
青葉:一番はやっぱり来てくれるお客さんの存在ですよね。もうひとつは、梅林太郎さんと一緒に『アダンの風』と『Luminescent Creatures』という2つの作品を作り、その楽曲が今まで以上に評価されたことによって、海外ツアーに行けるようになったことも大きいです。
梅先生との作業は特別なお守りをもらっているような感じがあります。私には梅先生が書いたメロディーやアンサンブルを(海外へ)持っていくという使命があるので。
─信頼できる人たちが周りに増えてきたことによって、市子さん自身がより外に向けてエネルギーを伝えられるようになってきたわけですね。
青葉:そうですね。運び屋みたいなことしていると思ってます。「音楽の運び屋」というか。梅林さんが精神を研ぎ澄ませて書いたひと粒の音符を、身体を使って届けていくのは私ですから。
自分の気持ちがどうこうというより、歌うための身体をまず健康体にしておくこと。精神力もそうですよね。いろんなインタビューで言っていますが、「管」みたいな存在になりたいんです。

─健康を保つために何か心がけていることはありますか?
青葉:あります、いくつも。身体のことで言えば、味噌を自分で仕込んだり、食べものは気を遣っていますね。精神面で意識しているのは、とにかく正直でいること。
日頃我慢しなきゃいけないことは誰もがあると思うんですけど、「これを見逃したらずっと気持ち悪いだろうな」とか「周りの人が何も言わないから黙ってよう」とか、そういうことをできないタチで。その場が一瞬グラッとなったとしても、その後すっきりしたり、新しい道が開けるほうが好きなんです。
─溜めないこと、大事ですよね。
青葉:大事ですね。気を遣ったつもりが、その気がずっと自分に残っちゃったり。だったら最初に言ったほうがいいと思います。
─今回のアルバムはそういう意味でもすごくヘルシーな感じがしますよね。清らかな風や水のような作品だと感じました。
青葉:ありがとうございます。ファンレターのような形でいろんな手紙をいただくんですよ。「本当に大好き、ありがとう」という子もいれば、死のうと思っていた子が私のアルバムを聴いて「君が歌ってくれるなら、僕ももうちょっと生きてみようと思う」と伝えてくれたこともありました。そういうものを読むと、素直に「生きててくれてよかった」と思うんですね。
自分も(作品を)作っているときは鬱と言っていいほどの状態になるときもあるので、そういう状態からなんとか這い上がってきて、こういうふうにまたみんなと触れ合える時間がやってきてよかったなって思います。自分のすべてを音楽に預けて解放してくれる人たちが世界中にいると思うと、嘘はつけないんですよね。

『Luminescent Creatures』

青葉市子
『Luminescent Creatures』
2025年2月28日(金)リリース
- COLORATURA
- 24° 3′ 27.0″ N, 123° 47′ 7.5″ E
- mazamun
- tower
- aurora
- FLAG
- Cochlea
- Luciférine
- pirsomnia
- SONAR
- 惑星の泪 (Wakusei no Namida)
https://ichiko.lnk.to/luminescentcreatures
『Luminescent Creatures Japan Tour』

2025年9月17日(水)
会場:福岡県 福岡市民ホール 中ホール
2025年9月19日(金)
会場:広島県 広島JMSアステールプラザ 中ホール
2025年9月23日(火・祝)
会場:愛知県・アマノ芸術創造センター名古屋
2025年9月26日(金)
会場:愛媛県 松山市民会館 中ホール
2025年10月10日(金)
会場:北海道 札幌コンサートホール Kitara 小ホール
2025年10月18日(土)
会場:岩手県・盛岡市民文化ホール 小ホール
2025年10月19日(日)
会場:宮城県 日立システムズホール仙台 シアターホール
2025年11月1日(土)
会場:石川県 北國新聞赤羽ホール
2025年11月7日(金)
会場:新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 能楽堂
2026年1月17日(土)石垣公演(バンド編成)
※会場は後日発表