INDEX
波照間のネーネーと青葉市子の世界をつなぐ「マザムン」
─2月に出たアルバム『Luminescent Creatures』には波照間との関わりがさまざまな形で影響していますよね。
青葉:そうですね。一番わかりやすいのは2曲目の“24° 3′ 27.0″ N, 123° 47′ 7.5″ E”で、「波照間口説」のメロディーを歌っています。この歌はムシャーマのときに私が参加している部落で歌っているもので、私が最初に教えていただいた歌なんです。
1番から4番までは内地(日本本土のこと)の言葉で歌っていて、5番だけ波照間の方言で書かれているんですね。自分のアルバムではその部分を歌っています。
─3曲目には“mazamun”という歌があります。マザムンとは波照間の言葉で「魔物」「妖怪」のことですよね。
青葉:何年も前から島の方から「ここにマザムンがいるよ」と教えてもらっていて、そこを通るたびに「こんにちは」と言うようにしてるんです。
─ずっと同じ場所にいるんですか?
青葉:そうなんです。お祓いの人たちが何人も試みたけど、いっこうにどかないみたいで。そのお家の方が「悪さしないんだったら、もういていいよ」と言ったこともあって、まだいるみたいです(笑)。その話を聞いてからは、通るたびに挨拶するようにしています。その話をネーネーにしたら、「こんなふうにマザムンの話をできる友達ができて嬉しい」と涙をボロボロ流していました。
─市子さんがマザムンの存在を否定しなかったから嬉しかったんですね。
青葉:“mazamun”は私のイメージで歌詞を書いたんですけど、その歌詞をネーネーに見せたら、彼女がいつもそこで見てた景色と同じだったんですって。「そうそう、ここに光の船が来るんだよね」とイメージを共有しました。そのネーネーとはマザムンの話をすることでさらに仲良くなれた気がして、マザムンが引き合わせてくれたのかもしれないですね。
─集落のなかにはマザムンを怖がっている人もいるわけですよね。
青葉:そういう考えの人もいるでしょうね。魔物なのかもしれないけど、私は実際に何かされたわけでもないし、「魔物」という名前を付けたのは人間側なので、何が悪いのかはわからないですよね。
─畏怖の対象であり、人によっては仲良くなれるものという意味では、マザムン=自然そのものではないかという気もしてきますね。
青葉:そう思います。他の島もそうだと思うんですけど、自然環境が作用するところが神様の場所になっていることって多いじゃないですか。潮がぶつかるところだったり、なぜか雨水が溜まるところだったり。

