渋谷の東急プラザ3階でスタートした『HOKUSAI:ANOTHER STORY in TOKYO』。葛飾北斎の『富嶽三十六景』を現代の視点で再解釈した、映像と音、さらには風と振動も組み合わせたイマーシブな映像アートエキシビションに潜入した。
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メディア発表会には中島健人らが登場「”北斎センパイ”とリスペクトしています」(中島)
江戸を代表する浮世絵師のひとりであり、世界的にも高い知名度を誇る葛飾北斎の『富嶽三十六景』。この作品が超高精細なデジタルイメージやインタラクティブな触覚体験を組み合わせ、新たなイマーシブなデジタルアートとなった。開幕前日に行われたメディア発表会には、歌手で俳優の中島健人が登場。「海外の方にも北斎の作品は広く知られていますが、僕らの世代も自分たちの表現を海外に届けたいと思うので、“北斎センパイ”としてリスペクトしています」と語った。
また、「日本が世界に誇るアートアイコンで、日本の歴史に名を残す素晴らしい芸術家である北斎さんの作品が現代技術で再解釈され、言葉なしでも子どもや海外の人に届く形で、新しい芸術が生み出されるのが楽しみです」と期待を寄せた。

メディア発表会には、コラボレーションアーティストとして今回の展示に作品を発表しているCOIN PARKING DELIVERYと、4月25日から展示される作品を制作中のGOMAも参加し、コメントを残した。
「今回のお話をいただいたとき、元々『富嶽三十六景』を自分で描いていたこともあったので、素直にめちゃくちゃ嬉しかったです。今回は北斎さんが木版の線で表現した要素を筆で描き、追加したモチーフにはシルクスクリーンを用いました。今の世の中と北斎が目指したもののズレのようなものを表現しようと思いました」(COIN PARKING DELIVERY)
「展示を体験し、最先端の科学技術によって、北斎さんの時代にタイプスリップしたような感覚になりました。拡大しても色も線も全然ブレていないスキャンの技術がすごいと思いましたし、(展示室のひとつである)『北斎の部屋』に入ったときの、床の振動と音を体感できるバイブレーションに癒されました。サウンドマッサージを浴びた感覚です」(GOMA)

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北斎は、デザイナーでインフルエンサー
90歳で絶筆するまでに3万点を超える多様なジャンルの作品を手がけた北斎。展示のプロローグは、北斎とは何者だったのか、知られざるエピソードも含めその人物像に迫るパネル展示だ。

北斎は、風景画から美人画、妖怪画まで多様なジャンルを手がけた浮世絵師であり、また、読み本の挿絵やアクセサリーなどの工芸品、テキスタイルや包装紙のデザインなども手がけたマルチクリエイターでもあった。
自らが本を企画し、テキストを書き、絵を描き、出版するまでに至った『北斎漫画』の作者にしてプロデューサーであり、着物の小紋文様をデザインして『新形小紋帳』にまとめたデザイナー / エディターでもあった。
かの有名な『富嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」はドビュッシーの交響詩”海”の着想源といわれており、1998年の米『LIFE』誌では、「この1000年で偉大な業績をのこした100人」に日本人として唯一選ばれた。
こうした読み応えのあるパネルがずらりと並ぶので、まずプロローグから北斎というアーティストへの没入が始まるだろう。
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北斎が見た景色を全身で体感する
プロローグを抜け、「大地の部屋」へ。高精細な映像と音で『富嶽三十六景』の世界を視聴覚体験できることに加え、映像と音の描写に合わせて震えるHaptic Floorにより、水辺や橋の上を歩く感触が味わえる。北斎は早朝から歩いてロケハンをしたのだろうか。富士山を軸としながら、その手前で繰り広げられる自然の風景や人々の動きを楽しんだのではないか。北斎が見た風景に足を踏み入れ、その歩みを追体験するような鑑賞体験がこの部屋から始まる。



「大地の部屋」を出ると、次に広がるのは「光の部屋」。浮世絵の立体感、和紙の質感を竹あかりのもとで鑑賞することで、時間をかけて江戸時代の行燈の明るさに目を慣らしながら、当時の人々がどのように浮世絵を愛でていたのかに想像を馳せることができる。

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風がつなぐ江戸と現代
続く「風の部屋」では、旅を愛でた北斎が感じた風を追体験するために、最先端の「風」制御技術を駆使。『富嶽三十六景』の中から風を感じられる8図を選び、遠江・駿河(現在の静岡県)から甲州(山梨)、江戸から木更津沖(千葉)へと北斎の足跡をたどる構成だ。
各地から望む富士の景色は、それぞれ異なる表情を見せる。 風を感じながらヴァーチャルに移動を楽しみ、関東甲信越や遠州一帯のどこからでも異なる姿で富士山を楽しめるという、その特殊性に改めてはっとさせられる。

