INDEX
野村萬斎の厩戸王子にドキッ
萬斎の厩戸は、姿そのものから厩戸に見えた。蘇我毛人と初めて出会う、池のシーン。福王和幸演じる毛人はスラリと背が高く、原作のままの気品をまとっている。そこに現れた厩戸が、ふり返った時のまなざしは、まさに漫画のページをめくり目にした、あのほほ笑みだった。ドキッとした。毛人は、あっという間に厩戸に心を奪われた。その心の動きが伝わってきて、思いがけず足場を失い落ちていくような怖さ、恋に落ちていくような甘さを、見ているこちらも味わうのだった。

その後も厩戸は、登場するたびに目が離せない存在感を放つ。皆が集まる場面では、柱にもたれて冷めた視線を投げるばかり。微笑んでいるようにも、蔑んでいるようにも見え、泣いていると言われたらそうも見えた。それでいてふとした表情に、可愛らしささえ感じさせた。