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さよなら名機「Heritage 3000」 PAエンジニアの巨匠たちが語るライブ音響の世界

2024.12.26

#MUSIC

「佐々木さんをはじめアコースティックの皆さんが僕の親みたいな感じ」(内田)

ーDubさんと佐々木さんのご関係は?

DMX:俺は若い頃から、アコースティックの人たちと付き合いがあってね。アコースティックって面白い会社なのよ。メジャー系のロックやポップスに造形が深いチームと、レイブ系やクラブミュージックに造形が深いチーム……通称「山チーム」ってのがあるの。で、メジャー系のチームのほうはめっちゃ厳しいチームなの(笑)。

佐々木:ちゃんとしているほうね。山チームはダメなほう(笑)。『RAINBOW 2000』(※)からやっているから、レイヴというかクラブミュージックというか、そういう系が得意で。

※1996年8月に第1回目が開催された日本最初期のダンスミュージックの野外フェス。約1万8千人が参加した。

DMX:その山チームは、小野(志郎)さんという亡くなったエンジニアの方が引っ張っていて、さんちゃんは小野さんのチームにいた。俺はもともと厳しいほうのチームと付き合いがあったんだけど、結局は同じ会社だからさ、山チームとも交流するようになったんだよ。「さんちゃん良い音してんな。このローの感じ、分かる~」みたいな感じで。

佐々木:音の作り方がちゃんと「ピラミッド型」になっているっていうか。多分、そこが共通していたんだと思う。そういう人の作る音は、聴けばすぐ分かる。クラブやレイヴの現場をちゃんと通ってきてるなって。通ってきていない人とは圧倒的に違うよ。

DMX:そう、ピラミッドで音を作ってる人は大体分かるね。低音の上に積まれる音がうるさくないんだ。

佐々木:そして僕とウッチーは、ウッチーがDRY & HEAVYのライブでLIQUIDROOMに出入りし始めた頃からの知り合い。うちの会社はライブハウスの音響管理もやっていて、その関係でうちのエンジニアが必ず現場にいるんです。すると、乗り込みPAの人を放っておくわけにもいかない。ウッチーはしょっちゅうLIQUIDROOMに来ていたから横で見てて、最初は本当に「大丈夫か?」って感じだった(笑)。それに、僕はその頃audio active(※)のPAをやっていて、そこでの繋がりもありました。ウッチーのドラヘビのPAの音を聴いて、「たぶん自分の思い通りになっていないんだろうな」って思っていたんだよね。

※1987年から活動するダブバンド。1993年にはエイドリアン・シャーウッドのプロデュースでレコーディングも行われ、1994年にはイギリス最大のロックフェス『Glastonbury Festival』に出演している。

DMX:対バンイベントとかフェスって、残酷なくらい本当に出音が違うからね。本当に違う。だって、置いてある音響システムは一緒なわけじゃん。それでバーッと音を出したときのその力量の差たるや。本当に恐ろしいと思う。

内田:そう。だからaudio activeとドラヘビでツアーをしたときに、打ち上げの居酒屋で佐々木さんにめっちゃ質問する、みたいな。そうやって教えてもらったことが、今の自分の血肉になってる。ドラヘビが最初にまともにライブをやったのがLIQUIDROOMだったから、佐々木さんをはじめアコースティックの皆さんが僕の親みたいな感じ。とにかく徹底的に教えてもらいました。佐々木さん、武田(雅典)さん、樽屋(憲)さん。もう頭上がんないですね。若いときは、皆さんのPAを見まくってました。僕、佐々木さんにすっごい大事なことを2つ教わったんですよ。

DMX:ほお?

内田:マイクプリ(マイクで収音した音の音量を増幅する機材)の値とEQ(音の周波数を調整する機材)の使い方なんですけど。それは今でもめちゃくちゃ守ってる。

DMX:亡くなった小野さんも俺が現場で困ってるとき、「宮崎くん、この辺を処理したほうがいいよ」って言ってくれたな。アコースティックの人はね、「こいつは見込みあるな」ってPAにはちょいちょい教えてあげてるんだって。

佐々木:シンパシーを感じる人にしか言わないかもしれない(笑)。

DMX:あははははは! まあ、やっぱり俺らは、自分が過去に失敗してきたことを知っているからね。

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