グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
9月24日は、学芸大学にある書店「COUNTER BOOKS」の代表、上田太一さんの紹介で、「虎ノ門蒸留所」の全体責任者である一場鉄平さんが登場。東京の素材を活かしたこだわりのジン作りのほか、デザイナーから蒸留家に転身したきっかけについても伺いました。
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「東京ローカルスピリッツ」がテーマの蒸留所
Celeina(MC):一場さんは、デザインや事業企画のキャリアを積まれた後、アメリカ・オレゴン州ポートランドに渡米し、現地のローカルブランドでデザイン業に従事されました。帰国後は、事業開発の仕事を通じて虎ノ門横丁、MIYASHITA PARK、東京音大などのプロジェクトに携わってこられました。その虎ノ門横丁の企画を進める中で「虎ノ門蒸留所」を開設し、自ら酒造りを学び蒸留家としてジン作りを始められました。現在は「虎ノ門蒸留所」の製造を含めた全体責任者として、日々ジンを手掛け、お酒の魅力を広めていらっしゃいます。
タカノ(MC):「虎ノ門蒸留所」とは、どのような場所なのでしょうか?
一場:虎ノ門ヒルズにビジネスタワーがあるんですが、その3階に「虎ノ門横丁」という食のフロアがあります。その中で、ガラス張りの蒸留所を運営しています。
タカノ:蒸留所でありながら、お店のようにもなっているのですね。
一場:はい。蒸留所とお店が一体となった場所です。そこで蒸留したジンを食事とともに楽しむことができます。
タカノ:コンセプトについても伺ってよろしいですか?
一場:「東京ローカルスピリッツ」というコンセプトで運営しています。八丈島や新島の焼酎をベースに使用したり、奥多摩にある日本酒蔵の仕込み水と同じ水を用いたりと、東京の素材を積極的に取り入れることを大切にしています。
Celeina:まさに東京ローカルといった感じですね。
タカノ:改めてなのですが、ジンの定義について教えていただけますか?
一場:ジンは多くの方がご存じかと思いますが、他の蒸留酒と比べて定義が比較的緩やかです。ラムであればサトウキビ、テキーラであればアガベといった明確な原料がありますが、ジンの場合、ベースアルコールはニュートラルスピリッツを用い、そこにジュニパーベリーという木の実を加えて蒸留するとジンになります。つまりジュニパーベリーを使うことが唯一の必須条件とされているのです。この自由度の高さが、クラフトジンを手掛ける多様な作り手を生み出している要因でもあります。
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自分で摘んだ金木犀を蒸留してジンに仕込む
Celeina:「虎ノ門蒸留所」では具体的にどのようなジンを作っているのですか?
一場:先ほどお話しした東京の島酒の焼酎をベースに、ジュニパーベリーを加え、さらに季節の植物を用いています。たとえば今の季節であれば、ちょうど咲いている金木犀を実際に摘んできて蒸留し、香りを活かしたジンを仕込んでいます。

Celeina:金木犀はご自身で森まで摘みに行かれるのですか?
一場:はい。金木犀は専業農家がいるわけではないので、小学校やお寺などに植えられているものを、許可をいただいてから摘ませていただいています。そして香りが逃げないうちに持ち帰り、すぐに蒸留しています。
タカノ:出来上がったジンには、やはり金木犀の香りが感じられるのでしょうか?
一場:完全に同じ香りにはなりませんが、確かに金木犀を思わせるニュアンスが残った仕上がりになります。
Celeina:お酒にそのまま漬け込むのではなく、どのように香りを移すのですか?
一場:ウイスキー製造でも使われる「ポットスチル」という銅釜の蒸留器を使用します。アルコールとボタニカルを入れて加熱すると蒸気が発生し、それを冷却すると再び液体に戻ります。理科の実験のような仕組みで造るのが蒸留酒なんです。漬け込むのではなく、蒸留器を用いて抽出していく点が特徴です。
Celeina:理科の実験という表現でとても分かりやすく感じました。そして「虎ノ門蒸留所」は東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2025で最高金賞を受賞されたのですよね。
一場:はい。つい先日授賞式がありました。「虎ノ門蒸留所」では年間20種類ほどのジンを製造していますが、その中には多くのコラボレーション商品もあります。このときは大分県の日田の酒蔵から依頼を受け、日田の森から採取した木や植物を用いてジンを仕込みました。それが評価され、最高金賞をいただくことができました。