グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
8月28日は、東ヨーロッパ音楽のスペシャリスト、ヨハネス市来さんからの紹介で、日本コロムビアでレコードのリイシューを手がけるプロデューサー・遠藤亮輔さんが登場。リイシューの仕事についてのほか、意外なルートでバズった過去の楽曲や、自身が運営を手掛ける「J-DIGS」についても伺いました。
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リイシューは115年の膨大なアーカイブを未来に繋いでいく仕事
Celeina(MC):遠藤さんは、日本コロムビアが保有するアーカイブ音源を活用したリイシューやコンピレーションの制作、デジタル配信や、ライセンスなどを行う一方、レーベルのカタログコンテンツを海外に発信するプロジェクト「J-DIGS」の運営にも力を入れられています。
タカノ(MC):日本コロムビアは日本で一番歴史のあるレコード会社ですよね。設立はいつなのでしょうか。
遠藤:1910年ですね。今年で115年になります。明治時代からですね。
タカノ:すごい! 歴史がありますね。
Celeina:今はリイシューの部署にいらっしゃるということですが、最初からそこに所属されていたんですか?
遠藤:入社した頃は営業をやったり、映像関係の仕事を長くやったりしていました。だいたい13年前くらいに、今の仕事を始めましたね。
タカノ:膨大なアーカイブをどのように管理して、探しているんですか?
遠藤:管理は、アーカイブスタッフがしっかりとデータ化してくれているので、その資料をひたすら掘りまくります。でもそれだけだとなかなか出てこないので、ネットで日本コロムビアのロゴが載ったレコードが紹介されてないか調べて、聴けるようだったら聴きます。とにかくひたすら聴くということが多いですね。
Celeina:逆に、ネットでキュレーションされている日本コロムビアのレコードから、話題になっていたり、これから話題になりそう、というのを嗅ぎ分けているということですか?
遠藤:そうですね。やっぱり世界中には日本のレコードのマニアの方が沢山いらっしゃって、海外のマニアがSNSで「これは面白い」と紹介しているのも参考にしていますね。
タカノ:遠藤さんがこのお仕事をされていて、面白さを感じる瞬間は、どんな時ですか?
遠藤:掘り進めていく中で、レコードには入っていない音源がマスターにだけ残っているのを発見することがたまにあるんです。そういう未発表音源を見つけたときは嬉しいですね。
タカノ:アルバムを再発売するときに、その未発表音源も一緒に入れるということですか?
遠藤:そうですね。そのまま出すときもあるし、権利をクリアしなければいけないタイプのものもあって、実は見つけたけど未だに出せていないものは結構ありますね。
タカノ:遠藤さんだけが知っている音楽もいっぱいあると! すごく特別感がありますね。どうすればそこで働けるんでしょうか(笑)。
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意外なルートでバズった、50年前の音源
Celeina:最近リイシューしたり、何かがきっかけでバズった楽曲はありますか?
遠藤:意外な曲が、世界でバズった例があります。1975年にセキトオ・シゲオ(関藤繁生)というエレクトーン奏者が出した『華麗なるエレクトーン』という、楽譜と一緒に売られていた教則用のアルバムがあるんですが、その中の“The Word II”という曲をカナダのアーティストのマック・デマルコが引用して、”Chamber of Reflection”という曲を作ったんです。これが大ヒットしたんですよ。さらにトラヴィス・スコットとクエヴォのユニット「HUNCHO JACK」も、この曲をサンプリングして、ヒップホップ界でも広がりました。それがきっかけで、原曲の”The Word II”もサブスクなどで聴かれるようになりましたね。
Celeina:サンプリングで日本コロムビアの音源を使いたい、という問い合わせは海外から直接来るんですか?
遠藤:実は一部だけですね。ほとんどは勝手にサンプリングされているという状況です。ただ、サンプリングのお陰で世界にその音源が広まっていくということもあるので、痛し痒しの状況ですね。
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日本コロムビアの豊富な音源を海外に発信する「J-DIGS」
Celeina:遠藤さんが手掛けている「J-DIGS」とはどんなプロジェクトですか?
遠藤:うちの会社は長い歴史があり、音源も沢山あるのですが、それを海外の人にもっと知ってもらいたいと思っていて。それで、若いスタッフと一緒に情報や音源を、InstagramやYouTubeを中心に発信していくというプロジェクトになっています。レコードの再発も「J-DIGS」のブランドのもとでやっていて、先程の『華麗なるエレクトーン』のアナログ盤も「J-DIGS」のシリーズの一環として出しています。
タカノ:海外で人気のあるアーティストはどのような方がいますか?
遠藤:最近では、POiSON GiRL FRiEND が人気ですね。テクノやトリップホップにフレンチポップスを融合した音楽をやっていて、日本コロムビアでは1993年にCDを出したんです。ここ数年で欧米や中国で人気が出ていて、今まさにヨーロッパでツアー中です。
タカノ:どうして今のタイミングで人気が出てきたんですかね?
遠藤:これが不思議で。シティポップ系は結構ブームに乗って人気が再燃するという流れがあるのですが、これはシティポップとも全然違いますし、独自の動きで特にきっかけが見えていないんです。
タカノ:そうなんですか。やっぱり口コミとかでじわじわと広がっていったのかな。
遠藤:ちょうどそれを受けて、今月の頭にレコードで発売することになりました。当初はCDでしか出してなかったので、初レコード化という形になりますね。
タカノ:不思議な感覚ですよね。海外で話題になって、それで知るという方も多いと思いますし。逆輸入的な感じですかね。
Celeina:インターネットが気軽にアクセスできるデータベースになり、どんどん海外とのカルチャーのやり取りが増えたことによって、色々な人のフィルターを通して自国の文化や音楽を知れるというのは、嬉しいことですよね。
タカノ:「J-DIGS」のWEBページを見ていると、すごく新鮮な気分になりますね。ジャケットがずらっと並んでいるんですが、海外からアクセスしているような気分になるというか。
Celeina:リスナーの皆様も、そのサイトを通して新しい音楽に出会うきっかけになるかもしれないですね。
遠藤:日本の知っている歌謡曲のシンガーとかでも、そういったフィルターを通して聴いてみると、また面白く聴こえたりすると思います。
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未発売のプロモーション用レコードから、ここでしか聴けない選曲
タカノ:ありがとうございます。最後に、遠藤さんに配信やサブスクでは聴けない曲、まさに「JUST ON THE RADIO」な選曲をしていただきたいなと思いますが、いかがでしょうか。
遠藤:今日はちょっとスペシャルなものを持ってきました。先ほどもお話ししたように、色々調べていると「発売されていない音源」が出てくることがあるんです。今回ご用意したのは、当時コロムビアがPCM録音という新しいデジタル録音技術を開発した際、その普及を目的に制作されたプロモーション用レコードです。関係者に配布するためだけに作られたもので、そのレコードにしか収録されていない曲なんです。もちろんCD化もされていません。
タカノ:めちゃめちゃ激レアな。
Celeina:秘蔵の音源ですね。では曲紹介をお願いします。
遠藤:最近ブームになっている「和ジャズ」の中でも人気のある曲を作曲・編曲している鈴木宏昌という方の楽曲で”ツァラトゥストラはかく語りき”です。
Celeina:「FIST BUMP」、本日は日本コロムビアでレコードのリイシューを手掛けるプロデューサーの遠藤亮輔さんをお迎えしました。 ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann