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仕事に取り掛かる時にまず行うのは、クライアントとの散歩
タカノ:建築家の方って仕事のオファーが入った時に、何から手をつけ始めるんですか?
大野:僕は割と応答型というか、自分でやりたいことがあるというよりは、クライアントの方々が面白ければ面白いほど、その人たちと一緒に何ができるかを考えるタイプなんです。なので、最初にクライアントの方の観察やリサーチから入りますね。 その人たちが持っているポテンシャルの観察だったり、その方々はどういう場所に興味があるのかを、一緒に散歩したりしてフィールドワークをして集めます。例えば、いきなりUFOがポンと現れてすごいだろうというよりは、その人たちの文脈と僕の持つ文脈が合わさった交差点みたいなものを作りたいと思っています。
タカノ:クライアントの方と一緒に散歩をされるんですか?
大野:建物を建てる敷地の周りにどういうものがあるのかを見たりするんです。歩いて近づいた時に、その場所がどういうふうに見えてくるのか、車で近づいた時だとどうかとか。あとは日当たりや風向き、実はこういう木が生えているとか、現地でゆっくり歩いてみてわかることが多いので、机の上でのリサーチをしてから、現地に行って結構歩きますね。
タカノ:大野さんは散歩が好きだという話を聞いたんですが、趣味としてもお好きなんですか?
大野:散歩が好きというよりは、状態として散歩していることが多いという感じですかね(笑)。どこかに行く時には歩いて行きたいし、周りをぐるぐる回ってから目的地に着くようにしています。色々歩いていると楽しいことが多くて、本当にお金のかからない趣味だなと思います。道端に咲いている花だけでも、1時間くらい妄想できるんじゃないかと思うほどです。
タカノ:小原さんも散歩がお好きですよね?
小原:散歩はすごく好きでよくするんですが、道端の花で妄想はしたことがないですね。
大野:結構できますよ。「この草食べられるだろうな」とか「何でここに種が飛んできたんだろう」とか。
小原:フィールドワークの観点でも面白く散歩できるんですね。
大野:「お金持ちが多い住宅街に生えている道草は、ベランダから種が落ちてきて、実は高級な花が咲いているんじゃないか」とか(笑)。結構地域性があるんじゃないかなと思います。
タカノ:想像力を働かせるのが面白いですね。
小原:知識の発射台があると、見えないものが見えるようになるんですね。