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訪れた人に問いを渡す「いのちの未来」パビリオン
タカノ:アイデアを考えるのも大変なお仕事だと思います。そして、現在開催中の大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちの未来」の建築・展示空間ディレクターも務められています。こちらはどのようなパビリオンなのでしょうか?
遠藤:石黒浩先生がプロデューサーで、「命を広げる」がテーマです。人間と機械の境界が溶けていき、アンドロイドか人間か区別がつかない世界に向かっている、という視点です。
タカノ:AIも身近になっていますからね。
遠藤:その時に、私たちはどうすれば私たちでいられるのかを考えるきっかけを提供します。答えを渡すのではなく、問いを渡すパビリオンです。訪れた人は迷いを持ち帰るようなものです(笑)。未来を自分たちで作っていく意識を持たなければ大変なことになる、という警鐘も込めています。
タカノ:建築は中央に直径約10メートル、高さ制限を最大限活かした17メートルの筒状空間「まほろば」を内包し、外壁は黒く滝のように水が流れているように見えます。どのようなイメージでデザインされたのでしょうか?
遠藤:石黒先生から「無生物から生命が進化し、ミトコンドリア、微生物、猿、人間へと進化してきた。生命は再び無生物へ戻り、広がっていく」という大きなビジョンを伺ったんです。境界を越え、生命が広がっていく様子を表現するため、鉱物、水、エネルギー、重力、光など生命誕生に必要な要素を象徴する「石」のような存在を作り、その表面を水が重力によって流れ、光を受ける姿を「渚」としてデザインしました。
パビリオンの外と中が一体になったり閉じたりする構造は、水の動きによって変化します。これは人と機械、生物と無生物といった境界を越えることとも繋がっています。
タカノ:見ただけではそこまで分からないかもしれないですね……。
遠藤:訪れた方が、この話を聞いて何か腑に落ちてくれれば嬉しいです。
タカノ:この話を聞いた上で、見に行きたいですね。
奥冨:初めて見たときに想像力を働かせてから、こうしたお話を聞くと、さらに理解が深まって、より何かを持ち帰られるような気がしますね。
タカノ:制作期間はどれくらいですか?
遠藤:4年半もかかりました(笑)。でも外観デザインは、最初からほとんど変わっていないんです。ただ、当初は浴槽から水が溢れるようなイメージでしたが、それは予算の関係で調整することになって。それでもこのアイデア自体はいけると思っていたので、多くの方々に協力してもらうことで、実現できました。
タカノ:これから訪れる予定の方も多いと思います。「いのちの未来」にぜひ足を運んでみてください。
遠藤:「泣けるパビリオン」とも呼ばれています。
タカノ:訪れることで、色々と考えるきっかけになりそうですね。さて「FIST BUMP」はグータッチで繋ぐ友達の輪ということで、明日スタジオに来ていただく方を紹介していただいています。遠藤さんが紹介してくださるのは、どんな方でしょうか?
遠藤:画家の福津宣人さんです。30年来の友人で、もともとはデジタル映像やグラフィック、音楽制作をしていましたが、その後完全にアナログの画家となりました。彼もまた境界を越えるマインドを強く持ち、文様パターンの中にさらにパターンを組み合わせる独特の作風を持っています。
タカノ:ありがとうございます。明日は画家の福津宣人さんに繋ぎます。「FIST BUMP」、本日は遠藤治郎さんにお越しいただきました。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann