グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
6月30日は、番組からの推薦で、ブックディレクターの鈴木美波さんが登場。本に魅了されたきっかけのほか、自身が企画するワークショップや読書会の内容、この夏オススメの本についても伺いました。
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書店と編集の総合企業「SPBS」に15年勤務
Celeina(MC):鈴木さんは、昨年12月まで「SPBS(SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS)」に勤務されていたとのことで。非常に興味深い品揃えの本屋ですよね。
鈴木:ありがとうございます。15年ほど勤務していました。
タカノ(MC):かなり長いですね。
Celeina:「SPBS」の歴史は何年ぐらいあるんですか?
鈴木:2008年にオープンしたので、17年目ぐらいになります。
Celeina:初期の頃から、「SPBS」に関わられていたということですね。「SPBS」は書店と編集の総合企業で、店舗は奥渋谷のエリアにあります。店内からは編集部の様子がガラス越しに見える設計で、本のみならず、文房具やアパレル商品なども厳選して取り扱っているんですよね。
タカノ:鈴木さんは店長も務められていたのですか?
鈴木:はい。店長として勤務していた時期もありましたし、マネージャー、イベントの企画、ワークショップのブッキングなど、さまざまな役割を担っていました。
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『フェルマーの最終定理』をきっかけに本の世界に引き込まれた
Celeina:書店で働こうと思われたきっかけは何かあったんですか?
鈴木:幼少期から熱心な読書家だったというわけではありませんが、サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』という本を、予備校時代に先生から薦められて、勉強の合間に読んでいたんです。その本が非常に面白くて、そこから本の世界に引き込まれていきました。その後、大学時代に東京で過ごす中で本屋に通うようになり、図書館司書の勉強もしました。そうした経験を通じて、本の世界で生きていきたいと思うようになりましたね。
Celeina:『フェルマーの最終定理』はどのような内容なんでしょうか?
鈴木:「フェルマーの最終定理」という、数学の未解決問題があるんです。それに世界中の数学者が挑み、最終的に約350年をかけて証明されたという過程を描いた、ノンフィクション作品です。過去の定理や研究が積み重なり、その間に生きていた人たちの知の結集によってようやく解決に至るという、非常に感動的なヒューマンドキュメンタリーなんです。
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ブックディレクターは、本を通じて人と人をつなぐ仕事
タカノ:そこで数学に興味を持たれたのではなく、本そのものに惹かれていったという点が興味深いですね。現在は「ブックディレクター」としてご活動中とのことですが、どのようなお仕事なんですか?
鈴木:ブックディレクターという職業には多様な役割がありますが、私は「本を通じて人と人とをつなぐ」ことが本質だと考えています。本をきっかけに関わった方々の生活が少しでも豊かになればという思いで活動していて、具体的には本づくりのワークショップや、作者さんによるイベント、ライブラリーの選書、ディレクション業務などを行なっています。
タカノ:本づくりのワークショップとは、製本みたいなことですか?
鈴木:企画から執筆、そして形にして本屋で販売するまでの一連のプロセスを体験していただくワークショップです。
Celeina:その作業は1人で行なうのでしょうか? それともチームですか?
鈴木:どちらの形式も経験がありますが、最近は個人で取り組む形が多いです。ご自身の作品を形にしていくというスタイルです。
タカノ:最近ではZINEフェスや文学フリマなども盛り上がりを見せていますし、個人で作ったものを発表したり販売したりするインディペンデントな動きが活発になっているので、そういった活動とも親和性が高そうですね。
鈴木:そうですね。個人で作品を作ることは可能ですが、制作途中で人に見てもらう機会が意外と少ないんですよね。なので、ワークショップの場で隣になった人と読み合って作るのは楽しいなと思いますね。
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本を読むきっかけになるような読書会を開催
タカノ:仲間ができるというのは貴重ですよね。読書会も主催されているとのことでが、どのような内容でしょうか?
鈴木:月に1度、埼玉県飯能市にあるアンティーク家具店「リファクトリーアンティークス」さんが、暮らしを楽しむマルシェを開催しているんです。そこで、本を暮らしに取り入れることをテーマに、好きな本の紹介をしたり、課題図書の感想を語り合ったりする、2時間程度のゆるやかな読書会をしています。
Celeina:次回の課題図書は既に決まっておりますか?
鈴木:はい。次回のテーマが「生物多様性―生き物との暮らしをどう楽しむか」というものなんです。それにぴったりだなと思い、課題図書として、森田真生さんの『かずをはぐくむ』を選定しました。
タカノ:スタジオに本をお持ちいただいておりますが、付箋の多さに驚かされます。
Celeina:読書会というと、しっかり読み込んできて深い議論を行うイメージがありますが、鈴木さんが主催される「eat read」はどのようなスタイルでしょうか?
鈴木:私自身もそこまで多く本を読んできたわけではなく、読書会には敷居の高さを感じていたため、「読んできていなくても参加できる」という形式を大切にしています。本を読むきっかけとして読書会に参加していただければ、という思いで「eat read」の活動をしているので、読書初心者の方も参加しやすい、ハードルの低さを意識しています。飯能市の自然に囲まれた場所で開催されているのも、おすすめポイントです。
Celeina:そして本日は、おすすめの本をご紹介いただけるとのことで、何冊かご持参いただきました。『GRAND MARQUEE』にも出演いただいた、村田沙耶香さんの『世界99』がありますね。
鈴木:今年の夏の必読書ですね。ヒヤッとする1冊です。もう1冊は、qpさんによる写真集『喫茶店の水』です。喫茶店で出される無料の水に焦点を当てた写真とエッセイ集で、お店ごとの水の表情や器、テーブルの雰囲気などが美しく収められていて、清涼感に溢れた1冊です。
タカノ:コーヒーではなく水、という目の付け所がいいですね。
Celeina:無料で提供される水をとてもスタイリッシュに捉えていて、1ページを飾っているのが新鮮で面白いです。
鈴木:エッセイも、お店の紹介というより、ご自身がなぜ喫茶店の水を撮影するに至ったかという個人的な内容が書かれているので、非常に面白いです。
Celeina:そのほかにもご紹介いただきたかった書籍のリストを、番組Xにて「鈴木美波さんのサマーリーディングリスト」として公開予定ですので、ぜひご覧いただければと思います。
- 『湖まで』大崎清夏
- 『SIDE STEP』自費出版 ZINE
- 『あなたに犬がそばにいた夏』岡野大嗣、佐内正史
- 『喫茶店の水』qp
- 『ひとはなぜ戦争をするのか』フロイト・アインシュタイン
- 『世界99』(上下巻)村田沙耶香

Celeina:さあ、「FIST BUMP」はグータッチで繋ぐ友達の輪ということで、お友達を紹介してもらっています。どなたをご紹介いただけますか?
鈴木:建築家であり、コーヒー店「MIA MIA」を営まれているアリソン理恵さんをご紹介します。
Celeina:明日も楽しみです。「FIST BUMP」、本日はブックディレクターの鈴木美波さんをお迎えしました。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann