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「SirSLow」の信頼関係が生む、音と言葉の化学反応
タカノ:どうやらこの『GRAND MARQUEE』に関わる人物が、「SirSLow」にも深く関わっていると伺いました。
堀内:前田さんです。
タカノ:月曜日のディレクターの前田さんが「SirSLow」で堀内さんの相方として、ミックスなどを担当されていたと。
堀内:僕らは1990年代ぐらいから東京のアンダーグラウンドシーンでずっと遊んでいるので、夜会う友達はみんな付き合いが長いんですよ。30年ぐらい一緒に夜遊びして社交し続けて、誰かの誕生日だったら遊びに行くとか、そんなふうにして生きてきた人たちがいっぱいいて。前田章太郎さんは、そういう友達の1人なんです。
彼自身もDJですし、共通の言語が多くて。感覚としても、僕が例えば「こんな感じで喋りたいな」と思ったらそういう音ネタを出してくれたり、ピッチもそれに合わせてくれたりするんです。だから言葉でのやり取りをそんなにしなくても、同じフィーリングで制作ができるんですよね。
タカノ:まず堀内さんの言葉があって、後から音をつけていたんですか? 逆かと思っていました。
堀内:『MID NITE ZINE 〜WANDERLUST〜』ではそうでしたが、普段ラジオで自由にやるという時には、まず音ありきのことが多いですね。最初に音のイメージをすり合わせて、「僕はこの辺の音が好きなんだけど、最近どんなのが好き?」みたいなところを共有して、「この辺のやついいよね」という共通認識を作っておくんです。そうしたら、例えば章太郎がDJやっていて、ここがいいなとなって、だんだん気持ちが上がってきて、言葉が出てくる。で、言葉を置き始める。
タカノ:化学反応的なことでしょうか。
堀内:そういう時もあります。ちょっと餅つきみたいな感じで、「そういうビートの感じで来るのね、じゃあこんなふうに行こうかな」とか、お互い操られる。ダークなトラックをかけられたら思ってもないダークな面が出てきたり、曲調が明るくなったらそれに引っ張られてポジティブな言葉に変わっていたり。
タカノ:実際の言葉自体も変わるんですね。僕たちも、後ろに流れるBGMによって話し方がスローダウンしたり、声のトーンが明るくなったりというかたちで影響を受けることはあります。