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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

ダンスアーティストのハラサオリは、ダンスを「道具」に問題提起するような作品を作る

2025.6.20

#STAGE

グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。

5月28日は、俳優の八木光太郎さんからの紹介で、ダンスアーティストのハラサオリさんが登場。自身を「ダンスアーティスト」と名乗る理由のほか、日常生活の中に溢れる「振り付け」的な事象や、大学時代にデザインを学んだことから生まれた身体への関心、最新のソロ公演の内容などについて伺いました。

ダンスを道具として使い、問題提起や気づきの共有を目指す

Celeina(MC):ハラさんは知覚装置としての身体を起点に、映像 / テキスト / ドローイングなど、複合的なメディアを交えたダンスパフォーマンス作品を制作されています。これまでのコラボレーターには森山未來さん、角銅真実さん、原田知世さん、蓮沼執太さん、U-zhaanさんなど、番組でもおなじみの方々がいらっしゃいます。

タカノ(MC):映像、テキスト、ドローイングなどの複合的なメディアを交えたダンスパフォーマンス作品とは、一体どんなものでしょうか?

ハラ:私は基本的に自分の体を使って、パフォーマーとして舞台に立つんですが、先程紹介していただいたように、説明するときには「ダンスアーティスト」と言っています。何故かと言うと、例えば「AIアーティスト」と言ったときに、AIを使って何かをする人っていうのは、その人がAIであるわけではないですよね。それと同じで、私の場合は、ダンスをある意味道具として使っていて、何か問題提起したり、気づきを共有したりするということを目指して作品を作っているので、振付家やダンサーとは少し違うんです。自分の体といろんな言葉や、映像、音楽など、とにかくいろんなメディアを複合的に集合させてお伝えするということをやっています。

「振り付け」的な事象は、ホームに並ぶ人やコンビニ店員の手さばきなど日常に溢れている

Celeina:バックボーン的にはどのあたりが強いんですか? 音楽なのかダンスなのか。

ハラ:言葉と体という感じですかね。言葉を発しているときの体の状態に興味を持っています。あとは、振り付けとダンスを別物として考えているんです。ダンスを街中でしている人はいないですが、振り付け的な事象は、実は街にすごく溢れているんですよ。

例えば、駅のホームで人がちゃんと並んでいる状態とかも、すごくよく振り付けされている状態だなと思います。誰かに言われなくても、みんながこれぐらいの間で立つというのを共有していて、急に座ったりする人ってあんまりいないですよね。コンビニ店員さんの手さばきとかは、いろんな動きがすごく整頓されていたり、オーガナイズされていたりする状態で、めちゃくちゃいい振り付けだなと思って、いつもコソコソ見ています。

タカノ:言われてみればそうですね、面白い。

ハラ:子どもの頃に避難訓練ってやりましたよね。地震が来たときは揺れたら机の下に入るとか、あれもすごく振り付けだと思っていて。そうやって、特定の状態に合わせて行動するコードが決まっている身体がすごく面白いと思っているので、そこを起点にしています。

去年までは、「震災と共生していく身体」というテーマで制作していました。日本はすごく自然災害が多いので、そういう抗えないものごとを受け入れながらも、ただぼーっとやられているだけではなく、そういう状況でどうやって社会を良くしていくかについて、身体を通して観客の方と一緒に考えるという作品を、ロングタームプロジェクトとしてやっていました。

大学時代にデザインを学んでいたことで、今のパフォーマンスのスタイルが出来上がった

Celeina:そういったパフォーマンススタイルにたどり着いたのは、何かきっかけがあったんですか?

ハラ:元々はデザインを勉強していたことがきっかけでした。グラフィックデザイン、都市デザイン、家具を作るプロダクトデザインなど、デザイン全般を美大で学んでいたんです。デザインって、「体をどうやって誘導してあげるか」という考え方なんですね。例えば、ビルの中にあるサインをデザインする場合は、どの順番で、どの色で作るとわかりやすく伝わるか、ということを学んだんです。

そういう考え方に触れているうちに、だんだんと身体の方が面白いと感じるようになって。大学卒業頃に「環境を知覚する身体の方から芸術表現ができないだろうか」と考えるようになったので、ダンサーとして活動するのはすごく遅かったです。小さい頃からずっと鍛錬してきたわけではないので、だからこそコンセプチュアルな振り付けについて考えています。

タカノ:そんなハラさんの最新のソロ公演が、6月にあります。こちらではどんなことをされるんですか?

ハラ:三軒茶屋のシアタートラムという劇場で、『プレイ・モデュロール』というパフォーマンスをします。レクチャーパフォーマンスという形式で行うんですが、『TED Talks』を思い浮かべていただくと分かりやすいかもしれません。『TED Talks』のパフォーマティブなレクチャーとしてのエッセンスを取り入れつつ、そこにダンスや音楽が介入してきたり、照明の演出があったりするような、本当に複合的なスタイルのパフォーマンスを上演します。

次回公演の『プレイ・モデュロール』は、ル・コルビュジエが提唱した概念にインスピレーションを受けた

タカノ:観客も参加して、みたいな感じですか?

ハラ:そうですね。テーマとしては、建築家のル・コルビュジエが昔提唱した「モデュロール」という概念を参照しています。これは、身体の尺度に黄金比を掛け合わせて建物を作っていくという考え方なんです。「建物を外側から作る」のではなく、「内側から体の倍率で建物を作る」という考え方にすごく面白さを感じ、その概念にインスピレーションを受けました。身体をどんどん倍増していきながらダンスを上演したら、観客の皆さんとどんな感覚を共有できるんだろうということを考えています。

Celeina:すごいですね。まさに、ハラさんが大学のときに勉強されたデザインという部分と、その後に習得したダンスが混ざり合って、パフォーマンスの1つとして作られているんですね。お客さんはどんな方がいらっしゃると思いますか?

ハラ:普段からダンスを観ている方もいらっしゃると思いますし、建築の専門の方もいらっしゃると思います。今回、ポップスもジャズも何でもできる素晴らしいミュージシャンの小田朋美さんに音楽をお願いしているので、彼女の活動を追っている方もきっといらっしゃると思います。

Celeina:窓口が広くて、すごく面白いですね。ハラさんのソロ公演『プレイ・モデュロール』は6月13日(金)から15日(日)まで、三軒茶屋のシアタートラムにて上演されます(現在は終了)。さあ、「FIST BUMP」はグータッチで繋ぐ友達の輪ということで、お友達をご紹介していただいています。どんな方をご紹介していただけますか?

ハラ:美容師の嶋津一馬さんです。彼はとても面白い人で、私の作品に出たこともあるんです。ダンサーや俳優、モデルが出演する中、1人だけ美容師として異質な存在感を出してくださりました。存在がアーティストみたいな感じで、ヘッドジュエリーを作ったりもしています。最近、新宿にサロンを開かれたところで、本当に精力的に表現活動をされている、素敵なクリエイターです。

Celeina:ありがとうございます。明日は美容師の嶋津一馬さんをお迎えしたいと思います。「FIST BUMP」、本日はダンスアーティストのハラサオリさんをお迎えしました。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann

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