メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

作家 / 編集者の友田とんは、日常で見落としているものをどう面白がれるか考え続ける

2024.11.4

#BOOK

グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。

9月4日は、出版レーベル「地下BOOKS」の小野寺伝助さんの紹介で、作家で編集者の友田とんさんが登場。中身を書き変えるという、新しい小説の形で執筆された『『百年の孤独』を代わりに読む』や、連載中の『地下鉄にも雨は降る』ついて、お聞きしました。

『百年の孤独』をマッシュアップ。中身を書き変える、新しい小説の形

Celeina(MC):まずはプロフィールからご紹介します。友田さんは1978年京都市のお生まれです。大学院で数学(トポロジー)を研究した後、IT企業で研究開発に従事する傍ら、文筆活動を始め、2018年に自主制作本『『百年の孤独』を代わりに読む』を全国の本屋さんへ営業したことを契機に、ひとり出版社「代わりに読む人」を立ち上げ、独立されました。今年7月に、活動の原点である『『百年の孤独』を代わりに読む』が早川書房より文庫化されています。

タカノ(MC):『『百年の孤独』を代わりに読む』を読ませていただいている最中なんですが、めちゃくちゃ面白い本です。あらためて、友田さんからこの本の内容について教えてください。

友田:もともとガルシア=マルケスという小説家が書いた『百年の孤独』という小説がありまして、それはコロンビアにある架空の村マコンドの盛衰100年を描いた作品なんです。その小説をまだ読んでない方の代わりに読みましょうというもので、読み進めながら連想したあまり関係ないと思われるドラマや映画、あるいはドリフのコントに脱線していって、小説を読むとはどういうことか、何が起きているのかということを書いた本です。

Celeina:もちろん『百年の孤独』については書いてありますが、それ以上に、カルチャーについても触れていらっしゃるということでしょうか?

友田:そうですね。私が幼かった頃に、心に触れたドラマなどを通じて書いています。例えば、小説を読んで「どうして、この人は死んじゃうんだろう」と思っても、その中身は書き変えることはできません。でも、なんとか書き変えられないかという。

Celeina:待ってください、中身を変えるんですか。

タカノ:この本を読んですごいと思ったのが、そもそも、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』は、マジックリアリズムという日常に非日常がミックスされていて、褒め言葉ですが、正直言ってワケがわからない作品なんです。そんなワケがわからないものに、友田さんがワケのわからないものをぶつけて、よりカオスにしたのが、この『『百年の孤独』を代わりに読む』という小説なんです。ヒップホップのサンプリングやマッシュアップみたいな、新しいジャンルを作り上げている感じがしました。

友田:まさにそれが言ってほしかった言葉です!

タカノ:だから、この本は『百年の孤独』について書いたわかりやすい解説書ではないという。

友田:むしろ、わかりやすくしたくない方向へ書いています。わかりやすさを期待して読んだ方は、「なんじゃこりゃ」となりますね(笑)。

Celeina:いい意味で期待を裏切ってくれるような本なんですね。

「代わりに読む」という言葉を思いつき、4年かけて『『百年の孤独』を代わりに読む』を執筆

タカノ:今まで誰もやらなかった試みですよね。読んでいて素晴らしいと思いました。まったく繋がらない点と点がバチンと繋がって、シナプス爆発するみたいな。すごく刺激を受けます。そもそも、この発想の原点やきっかけは何ですか?

友田:もともと海外文学が好きで、結構読んでいたんです。『百年の孤独』も好きだったんですよ。ちょうど10年前の2014年にガルシア=マルケスが亡くなったというニュースを聞いた時に、たまたま「代わりに読む」という謎の言葉を思いついたんです。そこで、これとこれを組み合わせるといいんじゃないかとひらめいたというか。最初は1年ぐらいで書いちゃおうと思って軽い気持ちで書き始めたんですが、4年かかりました。

タカノ:今日は、スタジオに友田さんが読んだ『百年の孤独』をお持ちいただいているんですが、付箋の数がすごい!

Celeina:すごいですよ! 付箋がカラフルなアートみたいになっていて、読み込んだ形跡が感じられます。記録という感じですか?

友田:そうですね。本自体にもたくさん書き込みをしています。これはこのまま置いとこうと思って、付箋を貼ったままにしています。

タカノ:友田さんは『百年の孤独』のどこがお好きですか?

友田:沢山ありますが、レメディオスという少女がシーツに包まれて、そのまま天まで飛んでいってしまうと。その時に、家にいた奥さんが「あのシーツだけは返してください」と神様へお祈りをするという一連の流れも含めて、すごく好きで、コントにありそうな場面だと思いました。

タカノ:『百年の孤独』にはそういった話がサラッと、普通のトーンで書いてあるんですよね。だから、「比喩なの? なんなの?」と読んでいて混乱します。

Celeina:ずっと気になっているんですが、友田さんが着ているのは『百年の孤独』Tシャツですか?

友田:これは『『百年の孤独』を代わりに読む』Tシャツです。

Celeina:『百年の孤独』と書いてある大きな本に付箋が貼ってあるイラストが描かれていますね。

タカノ:そのイラストに描いてある方が『百年の孤独』の本を扉を開くように、めくろうとしていますが、友田さんですか?

友田:そうです。

タカノ:これはどこで買えるんでしょうか?

友田:うちのネットショップで販売しています。

日常で見落としているものを見つけて、どう面白がるかを考える

タカノ:チェックさせていただきます。そして、友田さんは『百年の孤独』以外にも色々な執筆活動を幅広くされていますが、最近の執筆活動についても教えてください。

友田:最近は、地下鉄の駅の漏水対策を追いかける連載を書いていました。

Celeina:『百年の孤独』と角度が全然違いますね。

友田:でも、日常の中で普通だと見落としているようなものを見つけて、それをどうやったら面白がれるか、見守れるかということを、ずっと考えているんです。だから、小説も「普通にいい話だな」というだけじゃなくて、面白いものがないかなと思っています。地下鉄の漏水対策も同じで、地下鉄の天井がシートで覆われていて、そこのチューブに水が流れていて、管理番号が記されているけど、これは一体何なんだろうと思い、今ずっと取材しています。

タカノ:それは、どこかで連載されているんですか?

友田:柏書房という出版社のWEBマガジンで、『地下鉄にも雨は降る』というタイトルで連載をさせていただいております。

Celeina:いいタイトルですね。

タカノ:たしかに、地下鉄の駅に行くと、たまにバケツなどが置いてあることを見かけます。友田さんが注目している駅はあったりしますか?

友田:新宿三丁目の丸ノ内線と副都心線の間の乗り換え通路に左から右へ15mほど、ずっと太いチューブが這っていて、私はこれを「荒走り」と名付けています。

タカノ:荒走り(笑)。その観点で地下鉄の駅を歩いたことがなかったので、視点が1つ加わって世界が広がります。新宿三丁目駅、今度行ってみます。

Celeina:さあ、「FIST BUMP」はグータッチで繋ぐ友達の輪ということで、お友達をご紹介していただいています。どんな方をご紹介していただけますか?

友田:会社員で、文筆活動をされている柿内正午さんです。プルーストの『失われた時を求めて』という何巻もある小説を読み進める1年を綴った『プルーストを読む生活』という日記本や、働くひとりとして働くことについて考える『会社員の哲学』という著書も自分で作って売られています。一見、難しそうな人に思えるんですが、すごくご機嫌な人なので、明日はご機嫌をおすそ分けしたいと思います。

Celeina:明日も楽しみです。「FIST BUMP」今日お迎えしたのは、作家で編集者の友田とんさんでした。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS