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人称を行き来して世界を生み出す
タカノ:『DTOPIA』についてもう少し話したいんですけど、人称がすごく印象的なんですよね。ちょうど僕も二人称小説を書いていて、「お前」も被っていて。この『DTOPIA』は「お前」で始まって三人称も出てきますよね。
安堂:そうそう。「私」という一人称で書くとか、名前を使って三人称で書くとか色々スタイルがあるんだけど、その区切りにもグラデーションがあります。それを全部使っているので、結構珍しい小説だと思いますし、それが自然に繋がったらいいなと思って書いていました。
タカノ:普通の小説は一人称だったら全部一人称で書くから、すごくチャレンジングなことをしているなと思って読んでいました。
Celeina:無意識に読んじゃっていたから、そういうことを意識したことはなかったです。
タカノ:大体一人称か三人称が多いですよね。
Celeina:人称というのは、書き始める前から決めることなんですか?
安堂:そうですね。書き始める前から大体設定として決めておくんですけど、さっきタカノさんが生き物みたいって言っていて、すごく嬉しく思いました。結局人が語っているから、人称がちょっとずつ変わっていったりしているんです。何となく感覚としては分かることを、うまく言葉にまとめるのはすごく楽しいですね。
タカノ:最初からガチガチにプロットを作ったんですか? それとも書きながら同時にやっていたんですか?
Celeina:プロットというのは何?
安堂:設計図みたいな。
Celeina:なるほど。すごい小説家トークだ!
タカノ:こんなトークできて嬉しい。
安堂:あらかじめ起承転結を考えて書く人とそうじゃない人がいるんですが、今回はガザの話とか映画の話とか、2024年の時事的な話題を入れていく必要があったので、その場で考えながら書くという感じでしたね。
タカノ:なるほど。そこに文体のグルーヴみたいなものが出ているのかもしれないですね。
安堂:そうですね。
タカノ:ガチガチに設定を固めていても、息遣いみたいなものが出なかったりして。
安堂:何事もほどほどがいいんですよ。
Celeina:しれっとパワーワードが出ましたよ。「何事もほどほどに」って。すごく刺さりました。
タカノ:確かに大事なことかもしれない。
Celeina:ものを書いていると、自分と向き合う時間が長いですもんね。