グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
11月30日は、落語家の春風亭いっ休さんからの紹介で、演芸写真家の橘蓮二さんが登場。演芸写真を撮り始めたきっかけや印象に残っている撮影、落語の面白さについて伺いました。
INDEX
高座よりも楽屋の様子を撮りたかった
Celeina(MC):橘さんは、埼玉県出身で、人物カメラマンの小野麻早さんに師事した後、フリーランスとしてキャリアをスタート。1989年に第1回『期待される若手写真家20人展』に選出されています。紆余曲折を経て1995年5月より上野・鈴本演芸場で演芸写真を撮りはじめ、現在は演芸写真家の第一人者として、名人から若手まで多くの芸人の撮影を手がけていらっしゃいます。
タカノ(MC):演芸写真家というジャンルがあるんですか?
橘:いや、演芸写真家はないですね。前までは普通に写真家と言っていたんですが、5年ほど前から意識的に演芸写真家と言うようになりました。
タカノ:橘さんがパイオニアということですね。そもそもカメラに興味を持ったのはいつごろですか?
橘:高校時代なんですが、元々はカメラというよりも写真が好きで、暗室に籠ってプリントをしていました。だからカメラ自体よりも写真のプリントに興味を持った方が先だったんです。
タカノ:浮き上がってくる感じが良いですよね。
橘:そうですね。赤いライトをつけて、今では全く考えられないような作業をずっとしていました。
タカノ:何か特別なことをしている感覚がありますもんね。
橘:外で何かをするよりも、そういった所に籠って作業をして何かを作るのが好きでした。
Celeina:そこから演芸写真を撮り始めたきっかけは?
橘:もう30年近く前のことになりますが、それまでやっていた人物写真の仕事に限界を感じて、この先どうやって生きていくかを考えていたんです。その時に気晴らしのような感じで、上野にある鈴本演芸場に行って初めて落語を生で見たことが最初のきっかけですね。
Celeina:鈴本演芸場に初めて足を運ばれた時の気持ちは覚えていらっしゃいますか?
橘:その日はゴールデンウィークで、客席も満席で。僕は最前列の補助席の下手一番端で見ていました。鈴本演芸場は袖が上手にあって、自分と対角線にあったので、そこを出入りする芸人さんがすごく良く見えていたんです。そこで、楽屋の中にいる芸人さんの写真を撮りたくなったのがきっかけで、お願いにあがったのを覚えています。
Celeina:素の状態の芸人さんを撮影したかったんですね。
橘:今では高座ももちろん沢山撮っていますが、元々人物撮影をしていたので、最初は高座ではなくて楽屋の芸人さんを撮影したかったんです。
タカノ:高座のある種の緊張感とは、楽屋の雰囲気も全然違ったりするんですね。
橘:そうですね。楽屋は芸人さんが高座に向けて集中する場所でも、リラックスする場でもあるので、独特な雰囲気があります。それぞれ高座とは違う人となりが出るので、そっちの方が楽しかったです。
INDEX
立川談志師匠の晩年の7年間を撮影
Celeina:これまでに数々の芸人さんを撮影されてきたと思いますが、特に印象に残っている撮影は何ですか?
橘:立川談志師匠との晩年7年間の撮影です。最初の2年間は撮影に行ってご挨拶しても、ほとんど一瞥だけでした。それでも毎回写真を撮って渡していたら、師匠から「橘」と初めて名前で呼ばれて。「好きにしていいよ、いつ来ても撮らせてやるから」と言っていただいて、その後はどこの会に行っても撮影させてもらえるようになりましたね。
タカノ:談志師匠らしさがあるというか、粋な感じが素敵ですね。
橘:黙ってはいましたが、写真は確かに見てくれていたと思うと嬉しかったです。
タカノ:先日橘さんのインタビューを拝読しまして、撮影の際には芸人さんのストレスにならないように気をつけているという話を聞いたんですが。
橘:高座自体はお客様のためにあるわけで、写真を撮るためにやっている訳ではないので。あくまでも主役は芸人さんであり、集中力を削ぐようなことはあってはならないと思っています。難しい言い方にはなりますが「撮らないようにして撮る」。積極的に撮りに行くのではなく、状況や芸人さんの雰囲気を見て撮影しています。時には撮らない日もあるんです。
タカノ:撮影に行って、撮らない日もあるというのはすごいですね。撮影時はなるべく黒い服を着るようにするということですが。
橘:僕は客席と演者さんの中間にいることが多いので、どうしても視界に入ってしまいます。気配を消すというと大げさですけれど、芸人さんが気にならない状況を作るということは意識しています。
Celeina:まさに芸人さんに対する愛ですよね。
橘:先ほども話しましたが、私は悩んでいる時に演芸に出会わなければ、写真の世界から離れていた人間なので。演芸に救ってもらった写真家だと思いますし、感謝や愛の気持ちは絶対に持ってやっています。
タカノ:素敵な姿勢ですね。まだまだお話を聞いていきたいんですけれども、ここで1曲挟みましょう。橘さんに、この時間にラジオでみんなで一緒に聴きたい曲を選んでもらいました。選曲理由をお伺いしてもいいですか?
橘:僕自身がプロデュースする会があるんですが、会の構成として演者さんのトークで終わる時には、楽しい雰囲気で終わるためにこの曲をよく使っているので選曲しました。LOVE PSYCHEDELICOで“Freedom”。
INDEX
聴く人によって描く景色が違う。だから落語は面白い
Celeina:ご自身で落語会のプロデュースをされているということでしたが、どういった会を開催されているんですか?
橘:毎回自分の中でテーマを決めて、色々とその時によって会の内容を変えています。2022年の10月から2023年にかけては、桂二葉さんという人気の落語家さんが、春風亭一之輔師匠や笑福亭鶴瓶師匠をお呼びして挑戦する『桂二葉チャレンジ』という企画を4回やりました。2024年はネタおろしという、大ネタを初めて披露するという、自分にチャレンジする会をすることが決まっています。
タカノ:落語会のプロデュースを始めるきっかけは何だったんですか。
橘:先ほども言いましたが、私は落語に救われているので、写真だけではなく、演者さんやお客さんに貢献できるものはないのかということを探っていたんです。そういった時にお話を頂いて、小さなホールからスタートしたのがきっかけですね。
タカノ:橘さん主催の落語会は、橘さんのSNSでチェックできますかね。
橘:Xなどで色々と告知しているのでチェックしてください。
Celeina:ありがとうございます。最後にお伺いしたいんですけれども、ずばり、橘さんが思う落語の魅力を教えてください。
橘:聴く人によって頭の中で描く景色が違う楽しさだと思います。ラジオも同様だと思いますが、声のトーンやリズムなどさまざまな要素が絡み合って、それぞれが違った情景を描くと思うので。
Celeina:色々な方向にいけて、空想の幅が広いですよね。改めて、落語を見に行きたくなりました。「FIST BUMP」今日は演芸写真家の橘蓮二さんをお迎えしました。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann