グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
9月7日は、「上條・福島都市設計事務所」の上條慎司さんと福島秀哉さんからの紹介で、建築家の橋本尚樹(はしもと なおき)さんが出演。『2025年 大阪関西万博』のパビリオンも担当する橋本さんが建築に興味を持ったきっかけや、最近、手がけた建築のこだわり、パビリオンの裏話、東京タワーに感じた魅力などについて伺いました。
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両親の影響で建築の世界に
Celeina(MC):まず、プロフィールをご紹介させていただきます。愛知県岡崎市生まれです。京都大学を卒業後、東京大学大学院に進学。その後フランスの世界的建築家・ジャン・ヌーベルの事務所で働いたのち、内藤廣建築設計事務所を経て、橋本尚樹建築設計事務所として活動を開始されています。
タカノ(MC):世界的にも活躍されている橋本さんですけれども、今週3人目の建築家ということで、建築家さんの横のつながりはあるんですか?
橋本:建築家って実は閉じているコミュニティだと思っていまして。普段、仕事をしている上では横のつながりもあまり無いんですけど、一度、一緒にお仕事をすると、2~3年かそれ以上、一緒にいることが多いので、関係が深くなるということはあると思います。
タカノ:上條さん、福島さんと遊んだりとかもあるんですか?
橋本:あまり遊べていないのが良くないのですが(笑)。前職からよく知っているんですけど、独立してからもご一緒させて頂いて、ここ2年、3年とプロジェクトでご一緒させていただいています。
Celeina:最近のお仕事だと、玉造幼稚園でコラボレーションされているんですかね?


橋本:ご一緒させていただきました。
タカノ:デザインが素敵なんです!
橋本:ありがとうございます。
Celeina:橋本さんが最初に建築に興味を持たれたきっかけをお伺いしたいのですが。
橋本:建築家と出会う機会もなかったので、今思うと、両親の影響ですかね。物を作ることが好きな両親で、母親は手芸をしていたり、父親は趣味で彫刻をしていたり。小学生ながら、年賀状は父と毎年版画で作ったりしていて。そうやって手を動かすことが好きになっていったのかなと思います。
タカノ:そこから立体の建物にという辺り、きっかけはあったんですか?
橋本:絵も描くことも好きだったんですけど、どれもつくることの延長ですね。大学に行って、あれよあれよと今に至るという感じです。
タカノ:橋本さんの建築物、いろいろサイトも見させていただいたんですけれども、どれも曲線がすごい美しいと思いまして。そこは、ご本人的にこだわっている部分ですか?

橋本:そうですね。学生の時最初はカクカクしたものを作ったんですけど、当時、同じ研究室の女性の先輩たちが、とても自由にのびのびと曲線を描かれていたんですね。そういう正直な線に私も憧れて。カチッと収まらないで、自由に描いていこうというところからですかね。
Celeina:橋本さんが手がけられた建築で、最近のものをご紹介いただけるとしたら何かありますか?
橋本:今年山梨県の丹波山村っていうところにある村役場が完成しました。木で出来た大きな屋根が特徴です。東京から車で3時間ぐらい、村民が530人しかいない関東で一番人口の少ない村の役場です。プロポーザルで選んでいただいて、大体2年半ぐらいかけてようやく完成しました。

タカノ:こだわりポイントも聞いていいですか?
橋本:530人しかいない村なので、私たちが住んでいる町の役場のイメージとちょっと違って、わたしの家、わたしの場所なんだよと言ってもらえるような場所を作ることを心がけました。
タカノ:一見スタイリッシュなんですけど、ちょっと温かみを感じるというか。そこら辺もポイントなんですかね。
Celeina:こちらの建物を建てられたときは、その町の方や役場の方にヒアリングしたりとかからスタートされたんですか。
橋本:もちろんそういうプロジェクトもあるんですけど、プロポーザルという方法は、現地の方々との対話などをする前に建築家が提案を出し合うシステムなんですね。なので、こちらが想像して作らなきゃいけない部分が多くて、選んでいただいた後に、ようやく対話ができるんですね。ただ、今回はコロナ禍だったのでなかなかコミュニケーションが取れず、それはとても難しかったですね。
Celeina:でも、そんな中、素晴らしい建築をされていて。
タカノ:これを見に、山梨に行きたいですね。
橋本:舞茸とかジビエとか、この秋の季節、とっても美味しいものが沢山あります。是非、訪れてください。
Celeina:もしかして橋本さんグルメですか? ご飯の話が真っ先に出てまいりましたけれども(笑)。
橋本:好きですね(笑)。丹波山にもとても美味しいものがたくさんあるので。
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『大阪万博』で福岡伸一パビリオンの建築を担当
タカノ:橋本さん、『2025年 大阪万博』のパビリオンも担当されると聞きましたけど、最初にお話をいただいたとき、どうでした?
橋本:光栄でしたが、当時まだ事務所を始めて時間も経っていなかったので、身に余るというか、なんとか良い仕事にしたいというのが最初の正直な気持ちでしたね。
Celeina:ごめんなさい、パビリオンって何? というところから聞いていいですか?
橋本:パビリオンというのは、期間限定で建っている仮設の建物です。大阪万博は約半年間開催されるんですけど、その期間建ち上がって、その後すぐに壊されてしまうという意味です。
タカノ:たくさんある中の一つ?
橋本:そうですね。
タカノ:何か言える範囲で、どういうパビリオンか……?
橋本:万博にはテーマ館というものがあって、岡本太郎さんの『太陽の塔』が1970年万博のテーマ館でした。今回はそれを8人のプロデューサーが集まって、8館建てるということなんですね。私が担当させていただいたのは福岡伸一先生という生物学者で、『生物と無生物のあいだ』や『動的平衡』という本を出されている先生のパビリオンです。

Celeina:なるほど。福岡先生とチームの皆さんでお話を重ねて、これからどんどんアイデアが膨らんでいくところですか?
橋本:これからではなくて、、もう結構すぐじゃないですか。なので、もう2年以上一緒にやらせていただいていて、今は工事の始まるちょっと前ぐらいです。
タカノ:時間のスケールがすごいですよね。
Celeina:冒頭でお話くださった期間が結構長いというのは、そういうところにもありますね。
タカノ:福岡先生とも親密になりました?
橋本:大変よくしていただいています。
タカノ:もし明日、FIST BUMPがあれば、福岡さんがいらっしゃったかもしれないですね(笑)。
Celeina:いやいや、欲張り過ぎ(笑)。それでは、ここで1曲、橋本さんにこの時間にみんなで聴きたい曲を選んでいただいたんですけれども、選曲理由から、まず教えていただけますか?
橋本:これは、エチオピアの女性のピアニストの曲なんですけど、ひょんなところから知りまして。エチオピアにも行ったことはないんですが、どこか懐かしい故郷みたいに感じまして。そういう感情をおこすものって、どんな表現も共通してもちうるものだなあ、と思ったりしながら聞いています。
Celeina:それでは曲紹介お願いします。
橋本:emahoy tsegue-maryam guebrouで“The Homeless Wanderer”。
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建築家が語る東京タワーの魅力
Celeina:橋本さんが東京の街を見て、この建築物はカッコ良いなって思われるの、あったりしますか?
橋本:東京タワー。
Celeina:おお! 見えますね、ここから。
橋本:今や他の建物が高くて小さく見えますけど、私も地方出身なので、東京に来たなという象徴的な建築物でありつつ。隣の建物とかは色々デザインされていますけど、東京タワーは要らないものがついて無い感じがして。
Celeina:シンプルイズベスト。
橋本:それでいてなんか懐かしいような雰囲気纏っていて。カッコ良いなと思います。
タカノ:懐かしさとか温かみみたいなものを感じますもんね。安心感というか。
Celeina:橋本さん、お仕事の話を色々と伺ってきましたけれども、お忙しいと思うんですよ。そんなお仕事がはかどるためのリフレッシュとか趣味の時間って、何か特別やっていることありますか?
橋本:本当にいけないと思うんですけど、趣味がなくて……(笑)。でも、自分の事務所を開く前に、アフリカに最初の人類の骨を掘りに行ったりしたんですけど、そういう人類学とか考古学とか、そういうことが結構好きです。古い神社を巡ったりとか。

タカノ:いや、最初の人類の骨を掘りにアフリカに行くとか、好きを超えてますよ(笑)。
橋本:ほかにも洞窟画を見に行ったり、また仕事とは関係ない絵を描いたりっていうことは、今でも、時間があったらしたいですね。
Celeina:歴史をたどるという。
タカノ:お仕事につながりそうですよね。
橋本:人はなんでそこに絵を描いたのかとか、なんでそこで生まれてそういう生活してたのかということ、結局人に興味があるっていうんですかね。そんなことだと思います。
Celeina:人に興味がある。
タカノ:この話を聞いて、また橋本さんの建築を見たいですね。
Celeina:深みが増しますよね。
タカノ:リスナーの皆さんも、ぜひ橋本さんのホームページを見てみてください。
Celeina:「FIST BUMP」今日は、建築家の橋本尚樹さんをお迎えしました。どうもありがとうございました
橋本:ありがとうございました。
