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ヒロインを演じた宮﨑優に見る無限の可能性

そんな魅力的な俳優陣の中でも最も鮮烈だったのは、ヒロイン・西条朱音を演じた宮﨑優である。映画『死刑にいたる病』で強烈な役柄を演じていたのも印象深かったが、本作を見て、それはまだ彼女の物語の序章にすぎなかったのだと思い知らされた。西条朱音がTENBLANKの一員としてスターダムにのし上がっていくように、オーディションで選ばれた宮﨑優がキラキラと目を輝かせ、溌剌とした笑顔でドラムを叩く時、視聴者は、この先の彼女に秘められた無限の可能性を見るに違いない。
本作が「雨」のドラマなら、西条朱音は、雨を輝きに変えて身に纏い、明るさで藤谷をはじめとするTENBLANKや櫻井ユキノたちを突き動かしていく太陽そのものだ。本作は彼女に「先生」と呼ばれ敬愛される藤谷によって朱音が導かれる話であると同時に、朱音が藤谷を勢いよく引っ張っていく話でもある。第2話において、朱音がどうしても伝えたいことを藤谷に言うために、信号が青から赤に変わろうとしているのをものともせず、横断歩道の先にいる藤谷の元へと走るように。あるいは第5話において、踏切の遮断機が下りる直前、藤谷の手をとって朱音が走るように。彼女の真っ直ぐな思いは、「好きな人と一緒に仕事するやり方を失敗して、うまい歩き方分かんなくなっちゃって」と言う藤谷の孤独な心に寄り添い、TENBLANKそのものを動かした。そして、これまでにない「音」が生まれた。藤谷や朱音だけでなく、登場人物たちはTENBLANK結成以前、誰しもひとりだった。各々の「音」を響かせていた彼らが、紆余曲折を経て、それぞれの魅力が最も輝く「TENBLANKの音」を奏でる。そして、その「音」に熱狂する観客がいる。