INDEX
菅田将暉らハマり役を得た俳優たちの魅力を堪能

様々な角度から語れる本作だが、何より特筆すべきは俳優の素晴らしさだろう。TENBLANKのライバルとなる音楽ユニット「OVER CHROME(オーヴァークローム)」のボーカル・真崎桐哉を演じる菅田将暉をはじめ、佐藤健の意向がキャスティングにも反映された本作は、ハマり役を得た俳優たちの魅力を堪能できるドラマとなっている。


菅田が演じる桐哉は、カリスマ性溢れるミュージシャンである一方で、音楽や大切な人への焦がれるほどの執着と葛藤を垣間見せる。志尊淳が演じる坂本は、その眼差しの中に、真っ直ぐな恋心を滲ませ、また、朱音とのお笑いコンビのようなやりとりは見ていて微笑ましい。町田啓太が演じる高岡は、TENBLANKの中で最も「大人」な存在としてメンバーのサポートに徹する役割を担う。藤谷の世話を焼く所作の美しさには、思わず見とれてしまう。ドラマ終盤では、彼が内に抱えていた想いと彼自身の物語が明らかされていくのだが、その展開も素晴らしかった。

そして、佐藤健が演じる藤谷は「彼はそんなイメージあるかもね。突然消えちゃうような」と朱音の母・モモコ(YOU)が言うように、『グラスハート』というタイトルそのまま、ガラス細工のような脆さと儚さを併せ持つ人物だ。「天才の音は凡人を不幸にする」という言葉をTENBLANKマネージャーの甲斐弥夜子(唐田えりか)や桐哉が口にするように、彼という天才を前にすると、多くの登場人物が激しい感情を露わにせざるを得なくなる。そんな中でも、激さず一定のリズムで柔らかく話し続ける彼の様子は、天才ゆえの無邪気さと同時に、誰とも同じ世界を共有できない孤高の存在であることを感じさせる。