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『エミール・ガレ:憧憬のパリ』展レポート。故郷との関係に揺れるガレの実像を知る

2025.3.25

#ART

ガレ30代、1回目の万博(1878年)

脚付杯『四季』エミール・ガレ 1878年、パリ装飾美術館蔵 Paris, musée des Arts décoratifs

11年後。ガレが家業を引き継いで経営者となった翌年の『パリ万博』では、こんな作品が。脚付杯『四季』は子ども用のお茶碗くらいの小さな作品だが、施された繊細な装飾に目を奪われる。縁の部分に黄道十二宮の名前が記されており、よく見るとその下に星座の姿が彫られている。正面が牡牛座、間に星のマークを挟んで、右隣に双子座……といった具合だ。側面に彫られているのは四季をモチーフにした女性像だという。

本展ではこの作品を含め、ありし日の『パリ万博』で展示されていた実物が数点展示されている。「同一モデル」ではなく、歴史を目撃してきたご本人の登場である。そう知った上で見ると、器の中に当時の観客たちのため息や賞賛をたたえているように思えて感慨深い。 

とはいえ、この時点でのガレ作品にはそこまで大きな技法の変化が訪れているわけではない。ガレにとって1878年の万博で最も革新的だったもの、それはガラスの素地なのである。

花器『鯉』エミール・ガレ 1878年、大一美術館蔵

『北斎漫画』に登場する鯉を絵付けした花器『鯉』(当時はジャポニスム全盛期!)を見てみよう。波打つ花瓶の凹凸が光を屈折させて、まるで鯉が水の中を泳いでいるようだ。なるほどガラスを扱うということは、光の透過・屈折をデザインすることなのかとしみじみ実感する。

ガラス地の部分に注目してみると、かすかに青みがかったガラスが使われているのがわかるだろうか。これはガレが1878年の万博で発表した新素材「月光色ガラス」というもの。月光色ガラスはヨーロッパ各地で模倣されるほどの大人気を博したという。この年の万博でガレは、ガラス部門銅賞を受賞している。

ところで、装飾の技法を分かりやすく紹介するパネル展示にも注目したい。多彩な装飾バリエーションは、作家や職人たちのたゆまぬ研鑽の表れだ。中には「パチネ」「マルケトリ」など、のちにガレが考案した技法もあるので、鑑賞のヒントとして目を通しておこう。

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