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人気ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』が描く、誰もがハマるかもしれない落とし穴

2025.11.18

#MOVIE

©TBSスパークル / TBS
©TBSスパークル / TBS

勝男の中の小さな扉が一つずつ開き、「いま」が滲んだ名シーン

料理を続けていく内に小さな扉がひとつずつ開いていった勝男©TBSスパークル / TBS
料理を続けていく内に小さな扉がひとつずつ開いていった勝男©TBSスパークル / TBS

ミナトによる鮎美評は、今までの自分を変えるために、大きな一歩を踏み出した彼女の意図を汲んだ言葉にも聞こえる。だが、現実の鮎美はどうだろう。ミナトに言いたいことも言えず、勝男といた頃の自分に逆戻りしているのではないかと悩む姿を見ると、それは、鮎美の表面しか捉えていない上滑りの言葉に感じてしまう。

一方、勝男からのお願いは、鮎美への想いだけでなく、彼自身の「生活」をも感じさせるところが秀逸だ。第1話では、自炊するための食材の高さに目を白黒させていた勝男。材料費だけで4,380円もかかった初回の筑前煮の反省を踏まえ、その後しばらくは、安さ優先の買い物をしていたはずだ。

だが、スーパーに何度も足を運ぶうちに、世の中にはいろいろなものがあることを知り、彼の中の小さな扉がひとつ、またひとつと開いていったのだろう。たとえば、トイレットペーパーは「ダブル」のほうが、使い心地が良い。洗い物をしていたら、手が荒れてしまったけど、植物性の洗剤に変えたらマシになった。アイスは「アイスクリーム」表記のものが特においしい。

それと同時に、勝男は気付いていったはずだ。鮎美自身だけが使うものは細かく節約し、常に自分のことを後回しにしていた鮎美の気遣いに。そして、その気遣いの上に胡座をかいていた自分の傲慢さにも。ドラマでは直接描かれていないが、ダブルのトイレットペーパーに感動する勝男も、アイスの違いに驚く勝男も、そして、過去の自分の無神経な振る舞いを思い出して胸を痛める勝男の姿も浮かんでくるような、彼の「いま」が滲む名シーンだった。

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