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くだらない1日、ANORAK!、downt。コロナ禍がもたらしたレーベルとしてのungulatesの功績
ーungulatesはコロナ禍以降にくだらない1日とANORAK!のスプリット、downtのアルバムを出して、2020年代の流れを作ったなと。
辻:めちゃでかいと思う。
中川:僕はもともと「レーベルをやるぞ!」っていうつもりは全くなかったんです。まずは自分のバンドでツアーをやりたくて、でもSans Visageはみんなフルタイムで働いてるからなかなかできなくて、そういう中で海外から「日本に行きたい」って言ってくれるバンドがいたから、「それだったら僕も旅できるし楽しいな」みたいな感じもあったし、激情系(※)のバンドはプロモーターもほぼいない感じなので、それで自分でブッキングをやり始めて。そしたらコロナになって。ライブは禁止だけど、レコーディングは怒られないから、友達と一緒に作品を作って、ungulatesから出すことにしたんです。
※ハードコアパンクやエモのバンドの中でも特に攻撃的でカオティックな方向性のバンドを指す。「激情ハードコア」とも呼ばれる。
ーライブハウスにはあったエモリバイバルの流れが、それこそSNSとかを通じて、より広がりを見せた感じがありましたよね。
辻:さっき言ったような、勝手にバンドが大きくなっていくのを一番感じてそうな気がする。
中川:確かにそうですね。リリースしたバンドは僕より年下が多いんですけど、でもエモリバイバルが好きなのは一緒だし、ANORAK!はHot Mulligan、Free Throw、Origami Angelとか、もっとモダンな、いわゆる5th wave、エモリバイバルのリバイバルみたいな音楽も取り入れてて。好きなものを共有してる人と一緒に物作りをして、出してみたら結構リアクションがあって、それは嬉しかったです。
辻:それを自然にやってる感じがいいなと思った。SUB POP(※)みたいな感じというか、メジャーな方に行くことを否定せず、そのまま送り出してる感じがした。
※1986年に設立されたアメリカ・シアトルのインディレーベル。NirvanaやSoundgardenらが最初に契約したレーベルとして知られ、1990年代前半のグランジブームの立役者となり、それ以降も良質なバンドを多数輩出して、ビルボードチャートで結果を残したバンドも多い。
中川:僕のスタンスとしては、「他にやる人がいないんだったらやるけど、もっといい条件の話があるならそっちの方がいいじゃん」みたいな感じなんですよね。Oaikoの町田くんとかは、僕がくだらない1日とかdowntとかANORAK!とかをリリースしているのを見て、自分でも何かやりたいと思ってくれたみたいで、そういうのは嬉しかったですね。