1998年以来、28年ぶりの復活を遂げた反町隆史主演の連続ドラマ『GTO』(カンテレ・フジテレビ系)が最終回を迎える。
脚本・遊川和彦など1998年版『GTO』のスタッフが再集結した本作では、教師と生徒の双方がタブレット端末を携帯し、生徒や教師の情報 / 評価などがデジタルデータによって管理された「私立誠進学園」を舞台に、「毒親」「パパ活」「レスバ」などをキーワードとして、令和に生きるさまざまな生徒たちと教師の関係を描いてきた。
本作について、前半を振り返った記事に続いて、毎クール必ず20本以上は視聴するドラマウォッチャー・明日菜子がレビューする。
※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
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遊川和彦脚本らしいセンセーショナルな切り口

連続ドラマとしては、28年ぶりに帰ってきた反町隆史版『GTO』。平成を生きた世代ならイントロだけで身体が反応する主題歌“POISON 〜言いたい事も言えないこんな世の中は〜”を筆頭に、あの頃の『GTO』を思わせる懐かしさを随所に残しながらも、50代を迎えた鬼塚英吉(反町隆史)や教育現場の変化を感じるシリーズでもあった。
1998年版のように、デコトラでチキンレースをしたり、校舎の屋上から生徒を逆さ吊りにして本音を聞き出そうとはしない(当時も推奨される行為ではない)が、いまだに「圧倒的な大人」を体現しつづける鬼塚に、令和の生徒たちも確かな信頼を寄せている。だが、鬼塚の代名詞である「グレートティーチャー」の再定義にはなかなか苦戦しているようで、愛する妻・あずさ(松嶋菜々子)から出された宿題「あなたの言う“グレートティーチャー”ってなんなわけ?」の答えは、最終回を目前にしても、見つかっていない。
1998年版に続き令和版も脚本を担当したのは『女王の教室』(日本テレビ系)などの話題作を世に送り出してきた遊川和彦。原作にない完全新作となった今回は、そんな彼らしさが全開となり、第6話以降の後半戦も、支配的な父親に悩まされるサッカー部のエース・細川大翔(西浦心乃助)や、整形費用を稼ぐためにパパ活を始めようとしていた石橋心愛(北里琉)、SNS上のレスバ(インターネット上で行われる言い争い)で鬱憤を晴らしていた芦田綾乃(堀口真帆)、学校職員・宮澤龍之介(工藤阿須加)との「禁断の恋」に揺れる若槻琴音(梶原叶渚)など、センセーショナルな切り口のエピソードが続いた。
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テレビドラマの世界でも存在感をみせるAI

学校支給のタブレット端末を携え、SNSが当たり前になったデジタルネイティブ世代の生徒たちを相手にする令和版『GTO』には、「AI」が繰り返し登場する。
ここ数年で、私たちの生活とAIとの距離は急速に縮まり、気づけばAIなしでは生きられなくなった人も多いだろう。そんな現実を映すように、テレビドラマの世界でも、AIがごく自然に登場人物たちの日常に存在している。
第2シーズンに突入した日曜劇場『VIVANT』(TBS系)では、主人公・乃木(堺雅人)ら国家を守る「別班」の任務に、「AIハヤト」(声:高山みなみ)の存在はもはや欠かすことができない。その一方、2026年春期の『銀河の一票』(カンテレ)では、音声AIの利便性を認めながらも、人の声が安易にAIへと置き換えられ、さらには本人のあずかり知らぬところで悪用されかねない現状に苦悩する声優・白鳥光留(日髙のり子)の姿が描かれていた。
2025年冬期の夜ドラ『替え玉ブラヴォー!』(NHK総合)でも、大親友の優美(天野はな)から突如「絶交」宣言をされた主人公の佳里奈(北香那)が、手詰まりになった末に救いを求めたのは、AIのお悩み相談アプリだった。AIはアドバイスをしながら、相談者である佳里奈を労わる言葉を返しつづける。ところが、AIは彼女に寄り添おうとするあまり、いつしか優美を悪者扱いする言葉まで口にするようになり、佳里奈は「あんたはなんもわかってない!!」とアプリの入ったスマートフォンを投げつけてしまうのだ。
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AIに寄りかかる副担任・柏原(生見愛瑠)

令和版『GTO』では、生徒たち以上に、鬼塚のクラスの副担任・柏原実央(生見愛瑠)がAIを使っている。悩みを抱えたときも、仕事の愚痴をこぼすときも、話し相手はもっぱら、AIの「チャプチャプ」だ。
ドラマの登場人物に、悩みを打ち明けられるような相手がいない設定は珍しくない。しかし、柏原の場合は少し事情が違う。彼女にとってのそうしたポジションをすべてAIが担っているのである。柏原の描写は、業務や作業だけでなく、本来なら人間にしか担えなかったはずの深くデリケートな領域まで、AIによる代替が可能になったことを浮き彫りにしているのだ。
そんなAI隆盛時代に描かれた『GTO』は、鬼塚や柏原、小泉(高橋メアリージュン)、村山(夙川アトム)といった個性豊かな教師たちの姿を通して、教師の存在意義をあらためて問いかける。特に後半パートでは、このテーマが際立ってきた。
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AIを擬人化したような教師の登場

そうした問いに真正面から向き合ったのが、鬼塚のクラスで一番の秀才・福田樹(柴崎楓雅)を軸にした第6話だ。かつて反・鬼塚派の筆頭だった樹は、鬼塚に担任としての資質があるのかを見極めるため、数学教師の阿部郁人(市川知宏)を教室に招き、鬼塚に対してクイズ勝負を仕掛ける。
この阿部というキャラクターが、まさしくAIを擬人化したような存在、いや、「もしAIが教師になったら」というifの姿なのである。徹底した合理主義者であり、無駄を削ぎ落とした先進的な授業は、生徒たちからも一目置かれている。彼らの質問に対して淀みなく、最短ルートで最適解に導く語り口は、たしかにクレバーさを感じるのだが、そのやり取りは、どこか生成AIとの会話を思わせるのだ。
その後、樹は阿部が担任を務めるクラスへの転入を希望し、それが認められたものの、二人暮らしをしている祖母が硬膜下血腫で倒れたことを機に、皮肉にも阿部と鬼塚との違いを痛感することになる。
祖母に付き添って病院へ向かった樹は、どうすれば良いかわからず、阿部に助けを求める。だが、勤務を終えた阿部はバーで自分の時間を楽しんでおり、駆けつける気配はまったくない。
「福田くん、落ち着いて」
「ご家族は? 近くに頼りになる大人の人とかいない?」
「一人で不安だろうけど、君なら大丈夫」
阿部から返ってきたのは、どれも間違いではないけれど、あまりに表面的で無機質な言葉ばかりだった。

阿部の返事から状況を悟った樹は、今度は柏原へ助けを求める。電話越しの声から、彼が本当に頼りたい相手を察した柏原は、それとなく鬼塚に連絡するように促す。祖母の手術が終わるのを待つうちに眠ってしまった樹が目を覚ますと、手元のスマートフォンには鬼塚から大量のメッセージが届いていた。
本作中盤から「良いことを言う担当」になった柏原は、コスパ・タイパを重視して阿部と同じく無駄を嫌う樹に、倍速視聴の話を引き合いに出しながら「解決策を見つけることよりも、共感が大事」だと説く。たとえば女性の気を引きたいときも、最短ルートで結果を出すことより、相手に寄り添う過程にこそ意味があるのだと。
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令和の「グレートティーチャー」とは

だが、教師の存在意義を問う後半パートにおいて、この「AI教師のif」ともいえる阿部のエピソードから筆者が感じたのは、大切なのは共感だけではないということだ。というのも、柏原の「チャプチャプ」や『替え玉ブラヴォー!』のお悩み相談アプリのように、共感だけならAIにもできる。むしろ、AIと人間を分けるのは、こちらから問いかける前に、向こうから歩み寄ってきてくれるかどうかなのではないか。質問を投げかければ、AIはいくらでも言葉を返してくれるけれど、こちらからアクションを起こさない限り、手を差し伸べてくれることはない。助けを求める前から生徒を気にかけ、ときには頼まれずとも自ら動く。そんな鬼塚の生徒との関わり方にこそ、AIには代替できない教師の存在意義があるように思う。そして、この姿勢は樹のエピソード以降も一貫している。
「先生はなんで教師やってるんですか?」
「そんなの決まってんだろう。学校にいたいからだよ」
樹から問われた鬼塚は、そう答える。「君たち生徒が困ってる問題を解決してあげたり、志望校に合格させてあげるためかな」という阿部の答えとは対照的だ。 鬼塚が最終的に「グレートティーチャー」をどう定義するのかは、まだわからない。だが、高校生は素晴らしい時間だと、学校は楽しい場所だと生徒たちに伝えるために、鬼塚は教壇に立ちつづけるのだ。
『GTO』

カンテレ・フジテレビ系にて毎週月曜夜10時から放送中
公式サイト:https://www.ktv.jp/gto2026/