INDEX
『ばけばけ』ふじきみつ彦、『リブート』黒岩勉の脚本の力
藤原:脚本では、やはり古沢良太さんや今泉力哉さんの凄さを改めて思い知らされましたね。
オレンジ:脚本について、僕は『ばけばけ』のふじきみつ彦さんを挙げたいです。正直、『バイプレイヤーズ』(テレ東系)などこれまでのふじきさんの作品から予想していたものを超えてきました。個人的には、最近の朝ドラの中でもベストに入る作品です。コメディで笑わせつつグッと来させるセンス、そして最終回直前の「無音で30秒キープする」ような演出も成立させる物語の説得力が見事でした。
明日菜子:それは本当にそうですね(笑)。主題歌賞もハンバート ハンバート “笑ったり転んだり”で間違いないです。
オレンジ:今期の脚本では『リブート』の黒岩勉さんも流石でした。毎回楽しませる要素を設けつつ、先々の展開を緻密に仕込んで、後から鮮やかに回収していく。一香(戸田恵梨香)のリブートなど視聴者が予想していたであろうことの先にある感動を伝える手腕に、脚本家のトップランカーとしての凄みを感じました。
明日菜子:最近は日常系のドラマが多く、ダイナミックな展開を書く人が少ない中、黒岩さんのような「ザ・ドラマ」を感じさせる脚本は貴重です。是非いつか大河ドラマも書いてほしいですね。ふじきさんについても、初めて長期のドラマを書き切るという大きな挑戦の中、CMプランナーや放送作家などの経験を経てきたふじきさんならではの多角的な視点が『ばけばけ』の脚本には詰まっていたと感じます。
藤原:『ばけばけ』は日常の機微はもちろん、終盤は、彼の本分である作家業と、家族のために生きることの間で悩むヘブンの姿が描かれていることが印象的でした。最終週の前半などは実在の人がモデルだからこそ、その「ウラメシサ」を描くんだと、すごくスリリングな展開のような気がして、固唾を呑んで見守らずにはいられなかったです。2人の夫婦愛を愛おしく描きつつ、何かを失いながら生きていくことの残酷さについて考えさせられました。
明日菜子:ふじきさんの脚本もハンバート ハンバートさんの主題歌も、トキさんのモデルとなった小泉セツさんの手記『思ひ出の記』を参考に制作されているんですよね。あれだけ「私には書けない」と言っていたおトキちゃんが、最終的に手記を書き、そこに帰結するラストが素晴らしかった。