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「楽しそうに生きていることの方が、時代に効くと今は思ってる」(玉置)
─それはMONO NO AWAREでの活動とは異なったマインドセットですか?
玉置:MONO NO AWAREは……緊張感があります(笑)。もちろん良い意味での緊張なんですけど、時間もかかるし体力勝負でもある。それに「この音楽が世間に必要な意味は?」みたいな自意識についても考えたりしてて。俺ってそういう性格なんですよ、本来は。
ただ、MIZはその休暇がてら始めたプロジェクトなので、制作中の曲が前に聴いたことのあるような曲でも「まぁ、ええか」みたいな感じで、突き止める前に胸にしまっておく(笑)。
「こういう曲だからこういうアレンジを考えました」とか、そういう話になること自体がつまらないというか、疲れちゃうじゃないですか。それよりは自分たちが気持ち良いって思えるものを作るっていう。なので、もしかしたらインタビューのやり甲斐がないのかも。

─そんなことないです(笑)。歌詞にもそのマインドは表れているというか、『轉角民宿』では“山道”や“暑中見舞い”のように、目的が示されずにただ移動していくだけの曲が収録されています。
玉置:確かに。ただどこかに行ってるだけ、みたいな。
─「何を言ってるかわからない歌詞」ってあるじゃないですか。MIZは最早そういうことですらないっていうか、目的がない歌詞だなって思います。
玉置:いや、失礼だな! でも……仰る通りですね。MIZの歌詞って推敲しないんです。音が先にハマってる時に意味を入れようとすると、子音の使い方が変わったりして最初の音像から離れていくんですよ。それを避けるために、思いついた響きに似た言葉を無理矢理使ってます。“Yaku-Yaku Buscemi”とかね、成順が言ってて。
加藤:いや、周啓じゃない?
玉置:俺が言ったの? あー……ですって(笑)。
加藤:そうそう、響きで決めたんだよ(笑)。たしか『ゴーストワールド』(※)の話をしてて、流れで(スティーブ・)ブシェミがハマったんだよ。それをそのまま使ったんだよね、めっちゃ良いと思った。
※ゴーストワールド:同名コミックを原作とした、青春ブラックコメディの映画。スティーブ・ブシェミは、寂しい中年男性のシーモア役を演じた。
玉置:俺はバンドの音楽を作ってるから、基本的に自意識とか社会批評とかに塗れてて、「え? ブシェミってどんなキャラだっけ?」みたいなことを考えちゃうんですよね。だから「Bメロでオジサンの哀愁とか歌っちゃう?」くらいのスタンスなのに成順が「ヤクヤクブシェミだけでいいっしょ」みたいな。「え、ヤクヤクって何?」って聞いたら、「わかんない」って言われちゃって(笑)。でも、まあ、いっかみたいな。
─すごい、とにかくノリとフィーリングですね。
加藤:自分が音楽を聴く時は、歌詞の意味を考えないで音として全部聴いてるんです。そういうのを極端にやりたかったんですよね。
─加藤さんが作詞した楽曲にも近いノリがありますよね。例えば“恋の味”は言葉数こそ少ないですけど、口にすると気持ち良いというか。
加藤:“恋の味”は神奈川県の真鶴に、真鶴出版っていう「泊まれる出版社」があって。そこの人たちにぜひ泊まってくださいって誘ってもらって、せっかくだしそこで曲を作ろうとしたんです。ただ全然進まなくて。
それで周啓が1時間ぐらい横になって休んでる間に、「周啓、起きてるかな」と思って出てきたのが“恋の味”の<起きているかな>っていうフレーズなんです。
玉置:真鶴出版に泊まった時の日記なんだよね、“恋の味”って。
─“ビーバー”は以前スタジオ録音した曲を再度録り直す形でアルバムに収録されています。制作時期は遡りますけど、他の曲ともノリを共有している感触がありますね。
加藤:工事現場で働いている人とビーバーを比較して歌詞を書いてもらうように周啓にお願いしたんです。だから<掘る掘る>とか<積む積む>とか、そういう言葉遣いになってるんですよ。ビーバーって人間以外の動物で唯一自分の家を建設するんですけど、それによって環境破壊もしちゃうっていう、そこまで人間と同じで。
─なるほど。
玉置:ただ、歌詞の中ではあんまり皮肉に聴こえないようにしました。当時の俺はキャパオーバーの状態だったので、「あー、いやになっちゃうよー」みたいなことを言ってみたかったんです。
─そこで社会風刺にしないのがMIZらしいですよね。
玉置:そう、風刺って今の時代はもう厳しいっていうか……。ちょっと賢い人だったら誰でも風刺できちゃう気もしていて。それよりは楽しそうに生きていることの方が時代に効くと今は思ってるんです。
1つの強いメッセージだけがあると、そのメッセージを言ってるだけの曲になっちゃうと思うし。愛の歌は愛の歌が聴きたい時にしか聴かなくなっちゃうというか。僕らはもっと多様なタイミングで聴かれたいんです。
