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「どれだけ努力しても東京の自宅では手にできなかった生活ができたんです」(玉置)
─今作のレコーディングを進めたのは台東の長浜(チョウヒン)ですよね。どんな場所なんですか?
加藤:とにかく山と海が綺麗なんです。
玉置:ブッタさんとか台北のミュージシャンと喋ってると「台東が一番バイブスいいよね」って話題によくなるんですよ。MONO NO AWAREのライブで出会ったDSPSとかイルカポリス 海豚刑警のメンバーにも「インスピレーションが湧く場所だから行った方がいい」と言われたりして。それで「台東しかねぇな」っていう空気感が作られていったという。
加藤:そう。実際に行ったら、店もすぐに閉まるしね。

─それは良いことなんですか(笑)。
加藤:めっちゃ良いんですよ。おかげで朝8時に起きて、みんなでご飯食べて、そのあとレコーディングして寝るっていう……そういうルーティンで過ごせたんです。しかも台湾の人たちとの関係値もあるから、落ち着いてレコーディングできたし、「生活の一部でレコーディングをする」っていう感触が良かったですね。
玉置:うん、一番の収穫は生活リズムの復権(笑)。普通に朝起きて仕事して飯食って寝るのが一番良い。どれだけ努力しても東京の自宅では手にできなかった生活ができたんです。洗濯も手洗いして、それを物干し竿に干すみたいな、もうそれしかないんですよ。お遊びで「ていねいな暮らし」をやるんじゃなくて、必要に駆られたミニマルな生活になったのが良かったなって。
加藤:向こうの気温は体感で35度くらいだし、ちょっと作業したらすぐにシャワーを浴びてね。そのままほぼ上半身裸で録るっていう。


─最終的に出来た作品よりも、あくまで作品を作っている時の自分たちの生活が優先事項なんですね。
玉置:例えば、デジタル環境で制作を進めたら好きにやり直しできるから、音源が自分の想像通りになるかどうかが勝負の全てになるんです。ただ、アコースティックで、声もごまかしが効かないロートーンの歌唱法となると、生活がそのまま歌に出る。ギターの演奏でも筋肉の使い方とかに影響が出てくるんです。だからアレンジとかレコーディング中は健康にしよう、っていう感じでしたね。
─今作は環境音やギターのフィンガーノイズが音源にもちゃんと記録されていますよね。録音をした環境やエンジニアとコミュニケーションする段階で、そういった要素を残すことはどの程度意識したんですか?
加藤:今回は野外のテラスでアンプを使って録音したんですよ。だから弦の鳴りがちゃんと聴こえているんだと思います。

玉置:それと個人的な反省点として、ベトナムの時の録音は、音楽であること以前に「アヒルの鳴き声を聞きたくて聞いてる」可能性があるな……っていう。アンビエントすぎるというか、単にベトナムへ行ってマイクを立てただけでも作品としては同じような評価になっちゃうなって思ったんです。
『Ninh Binh Brother’s Homestay』はドキュメントでもあるんで、それはそれで別に良いんですけど、「だったら曲を作る意味ってなんなんだろうな」って。なので今回はギターと歌をもっと近い音像にした方が、わざわざ国外に行って仮の生活をしながら録音する意味が生まれると思ったんです。それをエンジニアの奥田(泰次)さんと相談してアンプを使うことにしました。