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正反対の決断、そのどちらにも寄り添う優しい眼差し
冒頭でダルデンヌ兄弟の作品は、何かを断罪することなく主人公の選択や葛藤を映し出してきたと述べた。本作でも、5人の若い母親たちが子供を育てるか手放すかという選択をする。苦境に立たされながらも導き出したそれぞれの答えは、場合によっては正反対でもあるのだが、この映画はそのすべてに寄り添い、受け止めているように思える。
特に注目したいのは、対照的な選択をするジェシカとアリアンヌだ。

2人ともシングルマザーになるが、ジェシカは苦しい経済事情の中でも子供を育てようとする。彼女は自分を養子に出した母親モルガーヌを探しており、なぜ自分を捨てたのかを聞き出す。
一方で、アリアンヌの母親ナタリーは一緒に孫を育てようとするものの、アリアンヌはそれを拒否し、子供を養子に出す決意をするのである。
『ロゼッタ』など過去作でも母と娘の関係が描かれていたが、ここでは主人公の少女たちとかつて同じ選択をした母親たち、その世代間にまたがる責任にも焦点を当てている。ジェシカは自らを捨てたモルガーヌとのつながりをなんとか見出した上で、自らの存在と決断を肯定しようとし、アリアンヌは母ナタリーの選択を断ち切ってちゃんとした家族を子供に与えたいと願い、養子縁組として養父母に預ける。

とりわけ印象深いのは、アリアンヌが赤ん坊を養子縁組に出す場面だ。養父母の車に子供を乗せた瞬間、アリアンヌの表情を追いかけていたカメラは、赤ん坊の顔を彼女の背中越しに捉える。そこに映るこれ以上ない満面の笑み。我が子の顔を見た彼女は居た堪れない表情で場を離れるが、その後、将来大きくなった子供に向けて手紙を書く。
最後に、学校に向かうであろうアリアンヌがバスに飛び乗り、そのまま画面の奥へと遠ざかっていく様子をゆっくりと映したショットは、彼女のあり方や複雑な感情、そしてこれからの行く末を優しく見守っているかのようだ。