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映画『ストリート・キングダム』田口トモロヲ×峯田和伸対談「バズじゃなくてバグを」

2026.3.24

#MUSIC

パンクは歌う人だけが主人公ではない

ー田口さんは東京ロッカーズの面々のライブを実際にご覧になっていたんですか?

田口:東京ロッカーズというイベント自体は観ていないですけど、ムーブメントの中心にいたバンドは個々に観ていました。印象に残っているのはFRICTION、じゃがたら、THE STALINなどですね。

ーその3バンドは劇中でも特別な役割を担っています。田口さんが当時受けた衝撃が、劇中の描き方にも反映されているということでしょうか。

田口:それもあると思うんですけど、この物語を立ち上げた時にはもっと登場人物が多かったんですよ。でも、脚本を読んだ人から「キャラクターが多すぎてついてけない」というご意見をいただいてしまって、ブラッシュアップする必要が出てきて。誰をピックアップして、誰を削ぎ落とすのかというのは、もう苦渋の決断でしたね。そうやって推敲を重ねて今の形になりました。

ー削らなくてはいけないほど数々のバンドが登場する中、主人公のユーイチはミュージシャンではなくカメラマンです。

田口:地引さんの『ストリート・キングダム』というリアルな原作をもとに真実の物語を描くときに、その非常に正直でフラットな目線を活かしたかったんです。地引さん、劇中ではユーイチから見た世界を描きたかった。

ーステージに立ち続けてきた峯田さんと、記録者 / 傍観者であるユーイチはある意味真逆の存在なんじゃないかと思うんですが、演じてみていかがでしたか?

峯田:バンドマンには曲があるように、カメラマンには写真があるんですよね。写真が曲なんだな、と。写真を撮るという行為と歌うという行為は、あまり変わらないと思ったんで、違和感はなかったです。あと、パンクの世界では歌う人だけが主人公ではない。写真を撮る人もファンジンを作る人もお客さんも、みんな一人ひとりが主人公になれる。だから、カメラマンの役だけど、どっかで歌っているような、そんな感覚でしたね。

ー「その一瞬を切り取る」という点において、写真も歌も同じというか。

峯田:はい。そうだと思いますね。

ーこの「歌う人だけが主人公ではない」という思想は、この映画の非常に重要なテーマですよね。今では考えられないですが、ライブハウスもほとんどが着席で、「ステージ上で演奏するミュージシャン / 下の客席からそれを仰ぎ見る観客」という一方通行の関係性だったものが、一気に壊れるという。ユーイチがTOKAGEのライブを観に行って最初にカメラに収めるのは、バンドではなく席から立ち上がって自由に踊る観客でした。これは東京ロッカーズが成し遂げた革命の中でも、最大の成果だと思います。

田口:おっしゃる通りです。

峯田:台本を最初にもらって、序盤の数ページをめくったらそのシーンが書いてあって。「ライブハウス。みんなが座っていて、タバコを吸う者もいて、本を読んでいる者もいる。そこからやがて一人の女が立ち上がり、ゆらゆらと踊り出す」みたいに書いてあるのを読んで涙が出てきました。

田口:全員がメンバーなんですよね。みんながムーブメントに参加している。観にきている人も、写真を撮っている人も、ライブハウスのスタッフも。今のように分担されていなくて、全員に可能性がある。本当に奇跡的な瞬間だったんじゃないかと思います。

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