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ビヨンセ、米津玄師……自らのルーツを掘り下げて更新する潮流
ロザリアだけではない。トップアーティストたちが自らのルーツと伝統を掘り下げ更新する意欲的な試みも進んでいる。
たとえば冒頭にも挙げたバッド・バニー。最新作『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』は故郷プエルトリコへの深い愛を表現し、ラテンの伝統を背負ったアルバム。これまでのレゲトンやラテントラップの枠組みにとらわれず、サルサやプレナなど伝統的なラテンの音楽ジャンルを掘り下げ、取り入れている。ラウ・アレハンドロの一連の『Cosa Nuestra』プロジェクトにも同様の意識がある。
ビヨンセは『COWBOY CARTER』で「カントリーミュージックの再構築」に挑んだ。カントリーを意欲的に取り入れ、その先人たちをゲストに迎えつつ、R&Bやソウルと融合しモダナイズした。ジャンルが持つ白人中心の音楽というステレオタイプを解体し、黒人文化としての側面を可視化した。それはテキサス州ヒューストンのカウボーイ文化の中で育った彼女自身のルーツの表現でもあった。
日本に目を向ければ、米津玄師のいくつかの楽曲にもそういう意識を見出すことができる。“IRIS OUT”がグローバルでヒットし、いまやJ-POPを代表する存在となった彼。もちろん世界的な躍進の背景には『チェンソーマン』などアニメとの結びつきは大きい。ただ、タイアップ主題歌としてのオファーと関係ないところで書かれたいくつかの楽曲には「日本の伝統文化への接続」のモチーフがある。たとえば、民謡や都々逸の節回しとファンクのグルーヴを融合させたようなテイスト“Flamingo”。米津はこの曲についてこう語っている。
自分は、日本人としてJ-POPを作ろうとしてきて。「日本人が共感できるようなものってなんなんだろう」と思って。歌謡曲とかニューミュージックとか、いろいろ日本の音楽の歴史を探していくうちに、根源的なものってやっぱり民謡だとか、そういうところにたどり着くんですよね。
「米津玄師『YANKEE』インタビュー」 / 音楽ナタリー(2014年)
また“死神”は、古典落語の同名演目をモチーフにした1曲だ。こういう視点から、米津玄師の表現に、ロザリア、バッド・バニー、ビヨンセと並べた「伝統のモダナイズ」という眼差しを見出すこともできる。