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フラメンコの再構築、『LUX』が提示する多文化性
なぜロザリアは『LUX』でこの「多言語・多文化的なポップミュージック表現」の境地に辿り着いたのか。その由来はスペインの伝統音楽であるフラメンコを「再構築」してきた彼女自身のこれまでのキャリアにある。
スペイン・カタルーニャ自治州出身、幼少期にThe Beatlesやブルース・スプリングスティーンを聴いて育ったロザリアは、10代で出会ったフラメンコに衝撃を受け、音楽の道に進んだ。2017年のデビュー作『Los Ángeles』は、カタルーニャ高等音楽院の在学中に発表された1枚。フラメンコを現代的に再解釈したカバーアルバムだ。
2018年の2作目『El Mal Querer』ではR&Bやヒップホップなどポップスの様式とフラメンコを融合。2019年以降はJ・バルヴィンを迎えた“Con Altura”やビリー・アイリッシュとの“Lo Vas A Olvidar”、バッド・バニーとの“LA NOCHE DE ANOCHE”など、コラボ曲を続けざまにリリース。
グローバルなポップスターとの邂逅と共に快進撃を遂げ、2022年の3作目『MOTOMAMI』はレゲトンなどを基軸にしたポップミュージックへと移行。ラテンアメリカの音楽カルチャーを取り込み、自身の音楽性の領域を「スペイン語圏の音楽」全体へと広げた。
こうしてロザリアは誰もやらなかった手法でフラメンコをポップミュージックの領域に拡張してきた。『LUX』もその延長線上にある。ビョークとイヴ・トゥモアを迎えオペラ的な歌唱を見せる“Berghain”を筆頭に、ロンドン交響楽団との共演でクラシックの要素を大きく取り込んだ。そのドラマティックなサウンドの中に“La Rumba del Perdón”などフラメンコの要素が息づく楽曲が配されている。カルミーニョとの“Memória”ではポルトガルの伝統音楽であるファドも取り入れている。ロザリアは本作で自身の音楽性の領域を多文化的な「伝統音楽のモダナイズ」そのものへと広げたわけである。
そうした『LUX』の多文化性は、彼女のルーツであるフラメンコの本質にも結びついている。そもそも、フラメンコという音楽自体に、スペインのアンダルシアを中心にロマやアラブなど複数の文化的伝統が折り重なる中で育まれてきた成り立ちがある。