メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

『しあわせな選択』でパク・チャヌクが描く二律背反。生きるための殺人は仕方がない?

2026.3.4

#MOVIE

過去のパク・チャヌク作品に見出す「引き裂かれる」モチーフ

「引き裂かれる」という二律背反の構図は、パク・チャヌク映画に一貫するモチーフでもある。怒りと暴力に突き動かされながら、心の底では救済を欲する『復讐者に憐れみを』(2002年)、『オールド・ボーイ』(2003年)、『親切なクムジャさん』(2005年)の復讐三部作。日本統治時代を舞台に素性を隠した女性たちの愛を描いた『お嬢さん』(2016年)。規律正しい刑事が謎めいた容疑者に惹かれ崩壊する『別れる決心』(2022年)。己を偽るスパイスリラーというジャンルにチャヌクが偏愛を公言しているのも腑に落ちる。2018年にはジョン・ル・カレ原作のドラマシリーズ『リトル・ドラマー・ガール 愛を演じるスパイ』を発表。フローレンス・ピュー演じる舞台女優が潜入スパイに仕立てられ、テロリストの恋人という筋書きを現実であると錯覚していった。

そして前作であるドラマシリーズ『シンパサイザー』(2024年)へと連なる。ベトナム戦争末期、CIAによって二重スパイとなったベトナム人将校が、同胞を裏切り、時代の動乱に引き裂かれていく。南北共同警備区域を舞台に北朝鮮兵と韓国兵の交流を描く『JSA』(2000年)で注目を浴びたチャヌクが、ヴィエト・タン・ウェンの原作小説に自身のナラティブを見出したことは想像に難くない。このTVシリーズではロバート・ダウニー・Jr.が1人5役でベトナムの傀儡化を目論むアメリカ人を演じ、チャヌクの意図を汲んでいた。2023年、チャヌクは『シンパサイザー』の編集作業がアメリカ脚本家組合の「脚色」に相当し、スト破りであるとして除名処分を受けているが、異議申し立てをすることなく、『しあわせな選択』の製作を理由に組合を去っている。

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS