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ん・フェニが語る、「可愛い」を遠ざけた過去との和解。ドリーミーに奏でる反抗精神

2026.3.31

ん・フェニ『tiered skirt』

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世界には大きく分けて二種類の人間が存在する。昨日着た服と今日着る服が同じでも何ら問題がない人間と、ぎゅうぎゅうのクローゼットの前で頭を抱え、電車を乗り過ごしてまでも「今日の自分」を探し出して全身を包もうとする人間だ。そういう意味では、ん・フェニというアーティストは、身に纏うファッションのみならず、自身のアイデアや声すらも日夜その様相を変えている。つまり、特定の型に収まることなく、あくまで総体的な概念として「ん・フェニ」という一つの像を描くのだ。しかも、自分の腕のみで。

さしづめ、直近のん・フェニ像は最新作『tiered skirt』に刻まれているようだ。2022年に発表したコンプリートアルバム『N’s PAST RECORD』がファンクにパンク、さらにサーフロックと縦横無尽な作品集だったのに対し、『tiered skirt』はヘヴィなシューゲイザーを下敷きにした楽曲が並ぶようにひとまず聴こえる。しかしそれは一側面でしかなく、過去の囚われていた「可愛い」というイメージとの和解やトレンドとの距離感、そしてリアリストゆえの闘争精神など、非常に多くの感傷が込められた一枚となっている。

ん・フェニとは何者か。わからない。ただ、奔放な振る舞いと実直なキャラクターの隙間に見える圧倒的な「個」によってリスナーがエンパワーメントされるということに関しては、疑う余地がないだろう。陽だまりの中で是永日和が撮影した写真の数々と共に、『tiered skirt』のゆらめきを追って欲しい。

ナメられたくない。でも好きなものは好きでいたい

─まず『tiered skirt』というタイトルに決めた経緯について教えてください。

ん・フェニ:そもそも、今回のアルバムはコンセプチュアルではないんです。シングルで出していた曲をギュッとまとめて、あとは新録したものを足したんですよね。なのでそれぞれの楽曲が混ざらないままに折り重なってるイメージから『tiered skirt』と名付けました。今日もちょうど穿いています。

ん・フェニ
ドリームロック、オルタナティブロックを軸とした楽曲をバンドスタイルで制作し、ライブ活動を行うソロ・アーティスト。「味の素×北欧、暮らしの道具店コラボWeb CMひとりごとエプロン」や「ABEMA Prime」EDテーマに楽曲が起用される。セルフプロデュースで活動しており、ビジュアルデザインや映像制作を自身でプロデュースしているほか、他アーティストへの楽曲提供なども行っている。主にバンドスタイルでライブ活動を展開。

─前回のインタビューではアーティストとして活動するまでの半生を主に話されていましたよね。その中で「可愛い」というイメージに回収されないように振る舞っていた過去のことも回顧されていましたが、今回『tiered skirt』というモチーフを持ち出したのは心情の変化があったのではないかと。

ん・フェニ:そうですね。「可愛い」にはどこかナメられてる感じというか……幼なくて見下されているようなニュアンスがあると思っていて、数年前は避けていたんです。一方で、普通にフリルとかリボンとかってシンプルに心惹かれるじゃないですか。それはさっき私が言った「可愛い」とは別だとは思うんですけど、いくら自分が別だと思っていても受け止められ方はコントロールできない。だから遠ざけていたんです。

ただ、今の自分の周りには凄いクリエイターさんたちがたくさんいるんです。みんな素敵なギャルで、各々の「可愛い」を自由にやっているんですよね。自分もそれによって解き放たれるというか、心理的安全性みたいなものを感じるんです。例えば「下着ってめっちゃ可愛いじゃん!」って私がヴィンテージ下着の良さをアピールしても、以前までの環境だったら性的な要素だけ切り取られてしまって、絶対にわかってもらえなかったと思うんです。ただ、今の環境なら同い年の女の子に「めっちゃいいよね!」って共感してもらえるんじゃないかと。

─先行シングルの“なにかいいことあるといいな”を発表した際には「最近“可愛い”を解禁してる中でも過去一可愛くなってしまった。棘とか毒じゃなくて、鈍器を振りかざすような部分にもしっかり気づいて欲しい」とコメントしていましたよね。

ん・フェニ:“なにかいいことあるといいな”はキーも関係していると思います。私は声が定まらないタイプで、ポッドキャストでも毎回声が違うんですよ(笑)。逆に言うと色々な歌声を出せるんですよね。例えば、この曲では私のぶりっ子としての声が出ていて。

─なるほど。

ん・フェニ:ずっとデメリットだと思っていたんです、声が定まらないって。ボーカルってドーンとカッコいい声が出るのが良いというか。今回“FRIENDS”でフューチャリングしたpavilionはまさにそういうかっこよさのあるバンドだと思うんですよね。

でも、ある時気づいたんですけど、例えば私が好きな吉澤嘉代子さんとかも声がとても変わる人なんだって。可愛いと思ったら、いきなり力強い音が出るみたいな。とても勉強させてもらいましたし、声を素材として入れる発想を貰いました。

─ん・フェニさんは声と同様にビジュアルも変化しているというか、一貫していないという一貫性がありますよね(笑)。こういうインタビューだと「あなたのアイデンティティはなんですか?」みたいな話に落ち着きがちなんですが、ん・フェニさんはそういうものとは無縁のアーティストという印象で。

ん・フェニ:一貫性はないです(笑)。何でも好きになっちゃうんですよね。多分、私って記憶喪失タイプなんだと思います。アイデンティティなるものを全て忘れたまま生きているのかも。

─なるほど。今のアーティスト写真は天使がモチーフとなっていますよね。ヘヴィなサウンドに天使という、ある意味でトレンド感のあるものというか……。

ん・フェニ:そう、天使爆流行りですよね! みんな「天使とシューゲイザー」みたいな……。最近「どんな曲聴いてますか?」ってInstagramで聞いてみたんですよ。100人くらい答えてくれて、それを全部聴いてみたんですけど、もう天使とか天国のモチーフがとにかく多くて。アパレルの展示会に行っても大きな羽がいっぱいありますし。

─わかります。

ん・フェニ:私も魅力的に感じて取り入れてはいるんですけど。テレビ一強の時代じゃなくなって、トップオブトップのものが生まれにくい時代に、色んな要素が組み合わさった結果として天使系が流行っているというか。私もドリーミーという軸で音楽をやっているだけで、シューゲイザーオンリーでやっているわけじゃないんですよ。

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