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夢に育児に奮闘する未来を支える「小さな相棒」

颯太によって激変した未来の日常において、最も大変だったことは何だろう。決して裕福とは言えない暮らしのなかで、さらに子どもが一人増えるという現実的な問題もある。だがそれ以上にハードなのは、何の準備も知識もないまま、突然、一児の母にならざるを得なかったことではないだろうか。たいていは、子どもを授かってからの十月十日といわれる期間のうちに、親になる準備を整えていくものだろう。あるいは子どもが生まれて初めて、親としての自覚が芽生えていくかもしれない。そして子どもの成長につれて、親自身も育ってゆく。
だが未来は、その猶予もないまま、ある日突然、「母親」としての振る舞いを求められることになった。いわば、親としてのスタート地点に立つ準備すら出来ていないまま、子育ての只中に放り込まれたのだ。しかもそれを約一年間も続けてきたのだから、その大変さは想像を超えているだろう。
そんな超ハードモード状態にあった未来が、さまざまな壁にぶち当たりながらも、自分を消費することなく楽しく育児に取り組めたのは、やはり颯太自身の存在が大きい。もちろん当初は、わんぱくで意思疎通ができない颯太に振り回され、戸惑う未来の姿もあった。けれど生活を共にするうちに、二人の関係性は親子でありながら、どこか横並びで歩くバディのようにも見えてきた。颯太は、守られるだけの子どもというより、夢に育児に奮闘する未来の背中を見守る「小さな相棒」のようにも映ったのだ。