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『マーティ・シュプリーム』評 シャラメが体現する、デタラメなアメリカンドリーム

2026.3.17

#MOVIE

1980年代のシンセサウンドが彩る、1950年代アメリカという黄金時代

音楽の使い方も奇妙だ。1950年代のニューヨークが舞台なのに、Tears for Fears、ピーター・ガブリエル、New Orderといった1980年代のポップソングが次々と流される。いや、昔の話なのに時代の異なるポップソングが乗せられる……というのは昨今珍しくない手法ではあるのだが、本作の場合、それを1980年代に絞っていることが独特であり、マーティのめちゃくちゃな人物像ともシンクロするようだ。その理由について、サフディは「私は歴史家ではありませんが、リサーチしていると1980年代にアメリカンドリームが復活したのを発見したのです」と説明している(※)。

IndieWire「Forever Young: Why the 1950s-Set ‘Marty Supreme’ Is So Obsessed with the ‘80s」より(筆者訳)

私は、1980年代に何が起こっていたのかを考えました。ポストモダニズムの登場があり、音楽やファッションにおいて1950年代を再現した最初の時代でもあり、そして敗北のあとで勝利の繁栄を求めたレーガン大統領がいたのです。

IndieWire「Forever Young: Why the 1950s-Set ‘Marty Supreme’ Is So Obsessed with the ‘80s」より(筆者訳)

ダニエル・ロパティンのスコアも1980年代風のシンセサウンドを使って1950年代頃のオーケストラ音楽を参照するという捻ったことを試みているが、そこには時代感覚の作為的な攪乱がある。つまり本作では、1980年代における1950年代リバイバルがこの2020年代にコンセプチュアルに引用されているのだ。アメリカ文化が何度でも再訪したがる1950年代の無邪気な夢……それを懐かしむこと自体を、批評的にあぶり出しているのである。

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