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『マーティ・シュプリーム』評 シャラメが体現する、デタラメなアメリカンドリーム

2026.3.17

#MOVIE

タイラー・ザ・クリエイターからアベル・フェラーラまで。クセ者揃いの配役

そうした「デタラメさ」は映画のあらゆるところに意識的に仕込まれている。まずキャスティングが変だ。ティモシー・シャラメの決定的な1本として作られていることや、マーティの恋人レイチェル役にHBOのドラマ『I LOVE LA』などで注目される若手のオデッサ・アザイオンを起用しているのには納得できる。あるいはマーティの悪友ウォーリーとして、かつて悪ガキ的なイメージとともに登場したラッパー、タイラー・ザ・クリエイターことタイラー・オコンマが俳優デビューしているのも、気のきいた配役と言えるだろう。『アンカット・ダイヤモンド』のザ・ウィークエンドの使い方も痛快だったし。

左から、マーティと、ウォーリー(タイラー・オコンマ / タイラー・ザ・クリエイター)

だが、俳優としてのキャリアを捨て実業家の妻として生きるケイ・ストーン役として、近年はセレブリティとしてゴシップを賑わせてきたグウィネス・パルトロウが登場する辺りから「思い切ったことするな」と感じさせられ、その夫ミルトン・ロックウェル役としてリアリティ・ショーの出演者であり「ミスター・ワンダフル」として知られるケビン・オレアリーが映画初出演していることからも、ある種の俗っぽさが意図的に注入されていることがわかる。

ケイ・ストーン(グウィネス・パルトロウ)

そして何より、『キング・オブ・ニューヨーク』(1990年)や『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』(1992年)で知られるニューヨーク派の映画監督アベル・フェラーラが本作では俳優として登場し、謎めいたギャングとして強烈な存在感を放っている。彼が画面に現れるとき、フェラーラ作品の猥雑で不道徳なエネルギーが流れこんでくるのだ。

そんな風に本作は、シャラメの映画かと思いきや、癖の強い人間が次々に現れては去っていく、目まぐるしい群像劇でもある。私としては大道芸卓球の相方となるベラ・クレツキ役としてハンガリー出身の詩人であり『サウルの息子』(2015年 / ネメシュ・ラースロー監督)のサウル役で知られるルーリグ・ゲーザが登場し、収容所で仲間の囚人たちに自分の身体に塗った蜂蜜を舐めさせたエピソードを語るシーンに「何だこの話は」とぎょっとしたが、要は、そうした濃厚な人生を送る人々が無秩序にひしめいていた時代だった、というのがこの映画の主張だ。サフディによれば1950年代頃のアメリカにおける卓球は、アウトサイダーたちが集まるシーンでもあったという。マーティの「夢」は、そうしたカオティックな磁場から発生したものだったのだ。

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