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ランティモスから感じるキューブリックへのリスペクト
竹島:ランティモス監督の魅力を言語化するのは難しいんですけど、「ストーリーが単純に面白い」というタイプではないと思うんですよね。100人いれば100通りの演出があると思うんですが、その中で「普通ならまず選ばない」演出をあえて選んでいる感じがすごくするんです。いい意味で底意地が悪いというか(笑)。いわゆるスタンリー・キューブリック監督的な感覚にも近いと思うんですが、「どうやったら観客を少し驚かせられるか」をずっと考えていて、変わったカメラの置き方やポジションを徹底的に探っているように感じます。
たとえば、テディとドンがミシェルを誘拐するシーンで、カメラが人物に寄るのではなく、音が聞こえないほど遠くの屋内プール越しから映しているところですね。緊迫している場面であるにも関わらず、良い意味で「冷めた」「突き放した」絵面がランティモスらしいんです。

竹島:また、過去の回想はモノクロームになり、テディが、宙に浮くお母さんから垂れている紐を風船みたいに持っている画も強烈でしたね。あれは「自分がしっかり掴んで離さないようにする」という意味だと思うのですが、それをセリフではなく映像として映すことが、たまらないんです。エキセントリックすぎて普通は躊躇してしまうところを、この人は平然とやってしまう。その点も含めて、僕は演出や画づくりを見ているだけで多幸感を覚えるんです。
