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Netflix映画『This is I』評 社会を照らす希望のエアミュージカル

2026.2.18

#MOVIE

当事者キャスティングの実施とその重要性

本作の魅力ははるな愛の物語や名曲だけでなく、キャスティングにもある。はるな愛を演じた望月春希は、本作が初主演。撮影開始当時は17歳であり、トランスジェンダー女性で国民的なタレントのはるな愛を演じることに大きなプレッシャーを感じていたかもしれないが、誰もが望月の持つエネルギーに魅了されるはずだ。自分の夢を諦めない強い意志、周囲を笑顔で包み込む明るいキャラクター、未知の場所へも飛び込んでいく怖いもの知らずさ。それは私たちが初めてはるな愛をテレビで見たときに感じたものと近しいものがある。

そんな望月を支える豪華な俳優陣も素晴らしいが、なんといっても今作ではトランスジェンダー当事者の俳優や50人以上の当事者エキストラが望月の脇を固めていることに注目したい。

2010年頃からアメリカを中心に「トランスジェンダーの役はトランスジェンダー当事者が演じるべき」という潮流が生まれ、ステレオタイプの再生産ではない、当事者が生きていくなかで積み重ねたリアルな生き様を映し出すことが重要視されるようになってきた。日本でも近年、その動きは少しずつ見られるものの、ここまで多くの当事者俳優がキャスティングされた邦画があっただろうか。本作に多くの当事者が映し出されたことは、社会や法整備から蔑ろにされ続けるトランスジェンダーたちが、過去、現在、未来に存在し、生活し、共に生きていることを証明している。それが作品に、そして映画を見た人たちの心に刻み込まれるのだ。そうしたアティチュードが、本作からはひしひしと感じられる。

かくいう私も当事者俳優として「冗談酒場」のメンバーとなり、撮影に出演している。そのうえで感じたのは、当事者俳優を起用することの良い点は、作品を見る人にとっての説得力以外にも、現場に参加する俳優同士がそれぞれの視点で話し合い、作品によりリアリティを反映できるということだ。そしてその意味は、作品を良いものにするという側面に留まらない。当事者は今後どう映画業界に参入できるのか、その際にスタッフにはどんな意識変革が必要か、そしてエンターテインメントはいかにして当事者コミュニティに還元できるのか。そうした今後の映画業界で検討されていくべきことの種が、この現場には蒔かれていた。私は今回、その一端を目撃したと思っている。つまり本作は、エンターテインメントの未来への始まりでもあるのだ。

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