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ドラマ『ラムネモンキー』レビュー 反町らトリプル主演の「中二病おじさん」ミステリー

2026.2.18

#MOVIE

©フジテレビ
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『コンフィデンスマンJP』『リーガルハイ』(フジテレビ系)などの大ヒットドラマを手掛けてきた脚本家・古沢良太の最新作『ラムネモンキー』(フジテレビ系)。

大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)などを経て久々にフジテレビに帰って来た古沢が新境地に選んだのは「1988青春回収ヒューマンコメディミステリー」だった。

反町隆史、大森南朋、津田健次郎という、ドラマ・映画・声優・歌手など幅広く活躍してきた3人を主人公に、37年前の顧問教師の謎の失踪事件を追いながら「青春の輝き」を取り戻そうとする姿を描いた本作。

木竜麻生演じる「マチルダ」も魅力的な本作について、毎クール必ず20本以上は視聴するドラマウォッチャー・明日菜子がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

1988年の「あの頃」と2025年の「いま」を行き来する

反町隆史、大森南朋、津田健次郎のトリプル主演によるおじさんドラマ©フジテレビ
反町隆史、大森南朋、津田健次郎のトリプル主演によるおじさんドラマ©フジテレビ

ちょっと重ための作品が飛び交う2026年冬クールだが、週半ばの水曜日に、異色(?)のおじさんドラマがある。主演を飾るのは、反町隆史、大森南朋、津田健次郎という同世代俳優3人。欲望が渦巻く大病院や血生臭い事件を扱う捜査一課が似合いそうなトリオだが、『ラムネモンキー』は、医療ドラマでも刑事ドラマでもない。

贈賄事件の主犯に仕立て上げられ、閑職に追い込まれた大手商社勤務の吉井雄太 / ユン(反町隆史)。パワハラ気味な態度を理由に、現場を追われた映画監督の藤巻肇 / チェン(大森南朋)。小さな理容室を営みながら、母親の介護に追われる菊原紀介 / キンポー(津田健次郎)。丹辺中学校の映画研究部で青春を燃やした3人の同級生は、いまや51歳のくたびれた中年男性になっていた。

ある日、彼らが中学時代を過ごした丹辺市で身元不明の人骨が発見されたというニュースをきっかけに、3人は卒業以来久しぶりに顔をそろえた。さっそく思い出話で盛り上がるものの、中学時代の記憶はところどころ抜け落ちている。特に曖昧になっていたのが、当時3人が憧れていた臨時採用の美術教員で映画研究部顧問のマチルダこと、宮下未散(木竜麻生)の行方だ。「おたく」が揶揄されていた時代に、映画に対する彼らの情熱を笑わず、強烈な影響を与えた人物でもある。そして、キンポーの家では、失踪したマチルダの情報提供を求めるチラシが見つかった。もしかすると、あの人骨はマチルダなのではないか――。ユン、チェン、キンポーが中学二年生だった1988年の「あの頃」の思い出と、2025年の「いま」を行き来しながら、3人はマチルダ失踪の謎を追っていく。

おたく少年だったおじさんたちの「中二病」ドラマ

おじさんになっても中二病全開のユン、チェン、キンポー©フジテレビ
おじさんになっても中二病全開のユン、チェン、キンポー©フジテレビ

「中二病全開だったころの自分を、恥ずかしく葬り去りたいとずっと思っていたけれど、いつしか眩しく取り戻したいと思うようになっていました」と語っていたのは、脚本を手がける古沢良太。フジテレビの人気ドラマ『リーガルハイ』『デート~恋とはどんなものかしら~』『コンフィデンスマンJP』から、2023年の大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)まで、テンポの良い会話劇で視聴者を魅了してきたコメディの名手である。

そう! 本作を一言で表すなら、まさに「かつて、おたく少年だったおじさんたちの中二病ドラマ」なのだ。すっかり冷え切った彼らの心を揺さぶるキーワードは「中二病」。誇張された自尊心と肥大した自意識の暴走によって発症する思春期特有の、あの病だ。

中学二年生の頃のユン、チェン、キンポーと臨時採用の美術教員・マチルダ(木竜麻生)©フジテレビ
中学二年生の頃のユン、チェン、キンポーと臨時採用の美術教員・マチルダ(木竜麻生)©フジテレビ

たしかに彼らの中学時代の思い出、とりわけマチルダにまつわる記憶は、中二病としか言いようがない。マチルダは宇宙船に吸い込まれ、イスカンダル近くのM78星雲へ帰っていった。学校のマドンナ的存在だったミンメイ(泉有乃)と沼のほとりで決闘していた。さらには、秘密結社の会合に参加していた……などなど、調査に付き合っている喫茶店店員・西野白馬(福本莉子)からは「過去の妄想や空想が記憶と混濁して現実と区別がついていない」「現実体験が元になっているから厄介」と呆れられる始末。だが、何者かになりたくて空想に浸っていたあの頃も、失踪事件をきっかけに情熱を取り戻しつつあるいまも、中二病全開モードの彼らのまなざしは、妙にいきいきしている。

中年男性たちの他愛もない雑談という新鮮さ

陽の高いうちからガンダーラ珈琲で雑談する3人©フジテレビ
陽の高いうちからガンダーラ珈琲で雑談する3人のおじさん©フジテレビ

もうひとつ印象的なのが、かつて映画研究部の部室だったレンタルビデオ屋「VIDEO JUPITER」の跡地、「ガンダーラ珈琲」で語らう3人の姿だ。女性たちが何気ないやりとりを重ねる『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)のような雑談を、男性同士はあまりやらないと言われている。「ロスジェネ世代」にあたる、ユンたちのような四、五十代の男性であれば、なおさらだ。ビジネス以外の会話といえば、もっぱら仕事帰りの居酒屋が定番で、話題も業務の延長線上になりがちなイメージがある。

だからこそ、ユンたちがガンダーラ珈琲で、まだ陽の高いうちから、アルコールも入れずに他愛もない会話に花を咲かせている光景が、とても新鮮に映るのだ。あの頃の熱量そのままに、マチルダとの思い出や、1988年のカルチャー用語が次々に飛び交う。ちなみに『ラムネモンキー』というタイトルは、中学生だった彼らが当時夢中で作った自主制作カンフー映画『ラムネモンキー 炭酸拳』に由来する。言わずもがなジャッキー・チェン主演の名作『ドランクモンキー 酔拳』をもじったもので、酒も飲めなかった年頃の彼らが、大人のカルチャーを自分たち仕様の「炭酸」に置き換えていたのが、なんだか微笑ましい。

けれど、ガンダーラ珈琲で交わされる51歳になった彼らの会話は、ときに驚くほどシビアだ。同じ場所に戻ってきたように思っていても、仕事も社会的立場もライフステージも異なる彼らが背負うものは、それぞれ違う。

たとえば、いまや順風満帆とは言いがたいが、家庭を持っているのはユンだけだ。チェンとキンポーは独身で、なかでも認知症の母の介護を一人で担うキンポーが置かれた状況は(自分だけではどうにもできないからこそ)厳しい。久しぶりの再会の席で飛び出した「そうやって上から見下すために僕に会いにきたんだろ?」「僕の暮らしを見て優越感に浸って自分を慰めるために僕に会いにきた」という言葉にはドキッとさせられた。

男性同士の「ケア」にグッときた

男性が必要とするケアのかたちとは©フジテレビ
男性が必要とするケアのかたちとは©フジテレビ

3人は仕事上の関係ではないからこそ、会社や家庭では飲み込んでしまう本音がついこぼれてしまうわけだが、そうした本音や弱音を打ち明けることが、彼ら同士の「ケア」につながっている。家業を継いだキンポーがあらためて自分の夢に向き合う第4話は、そのことを象徴していた。かつて漫画家を志していたキンポーは、大人になったいま、もう一度漫画を描いてみることに。しかし、チェンのようなクリエイティブに対する衝動が自分にはないことに、あらためて気づくのだ。

すこし寂しげに笑うキンポーの肩を、ユンがガシッと抱く。第4話のハイライトはその後のキンポーの気づきの方にあるのだが、彼の寂しさごと受け止めるようなユンの行動にグッときた。もしかしたら、あのハグこそが、この世代の男性がずっと必要としていたケアのかたちなのかもしれない。

「マチルダ」に向き合いながら自分自身と対峙する

3人の憧れ・マチルダはなぜ失踪したのか©フジテレビ
3人の憧れ、マチルダはなぜ失踪したのか©フジテレビ

マチルダ失踪の謎を追うために、彼らは中学時代に縁のあった人たちを辿っていく。それは「マチルダ」という人物と向き合うのと同時に、自分自身と対峙する作業でもある。そんな3人を見ていると、こちらまで忘れたかった学生時代のあれこれが不意によみがえりそうになる。ちょっと気恥ずかしさを感じながらも、一世代上の先輩方の奮闘を最後まで見守りたい。

『ラムネモンキー』

©フジテレビ
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フジテレビ系にて毎週水曜夜10時から放送中
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/ramunemonkey88/

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