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「クリエイターに利益がうまく還元されていないのではないかといった問題意識」(片岡)
─このタイミングで指針が作られた背景や経緯には何があったのでしょうか?
片岡:2024年4月から、音楽・放送業界に対して実態調査を開始したわけですが、そのきっかけとなった一つの大きな出来事として、同年に政府が「新しい資本主義」として打ち出した成長戦略の中に、「コンテンツ産業活性化戦略」が入ったということがあります。映画やアニメ、あるいは音楽などのコンテンツを日本の基幹産業と位置付け、官民連携で海外展開と国内環境整備を推進することによって、経済成長と国際競争力強化を目指すものです。
その一環として、クリエイターに利益がうまく還元されていないのではないかといった問題意識も示され、取引関係の改善のために調査すべきではないかという話になりました。

森崎:日本の中だけにいると気がつかないことも多いのですが、海外のエンターテインメント業界で仕事をした経験のある人からすると、日本の芸能界の法整備の少なさに対して驚かれることも多いと聞きます。海外展開する以上、海外と基準を合わせる必要が出てきたのではないでしょうか。
─同時に日本ではここ数年、芸能界において積年の課題がさまざまな形で問題として露呈してきました。例えば事務所を退所したタレントのテレビ出演が極端に減ったり、芸名を使えず変更を余儀なくされたりするようなケースもありましたね。
片岡:そういう報道があったことは承知をしております。「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」2024年改訂版では、かなり具体的な例として「実演家・クリエイターの事務所移籍に際して、移籍前の事務所が在籍当時の過去素材の権利を所有し続ける場合、その許諾を拒否することで、その利用を妨げ、事実上、移籍後の仕事をできなくするといった慣行が見受けられないか、調査を行う」とご指摘をいただいて、そういうことは一つの調査のきっかけになっていると思います。