INDEX
紅葉よりも、樹木そのものに美しさを見る

ピンセットで枯れ始めた紅葉の葉っぱを一枚一枚取り除いている、盆栽のお手入れ中の職人さんを発見。「葉を取ってしまうんですか?」と尋ねると「もう美しくないから」とズバリと答えてくださった。そうか、もうこの鉢の美しいときは終わってしまったのだな……と少し寂しい思いでいると、手を動かしながら少しずつ言葉を続けてくれた。「紅葉はその時だけ、一瞬のものでしょ。みんなそれを見て綺麗だって言うけど、自分たち職人はそこじゃなくて、木の姿そのものを見てる」「こんなに綺麗な幹や枝が、いつでもそこにあるんだからね」。

葉を取り去って、新たな姿を現した山もみじの鉢。葉に気を取られて気づかなかったけれど、幹のかすかな曲線がなんだか色っぽい。
花が咲いた、紅葉した……といった「状態の美しさ」とはまた別の、樹木そのものの「存在の美しさ」を見るということだろう。なんだか人間の話にも通ずるようで、胸にずしっと来る言葉だった。

