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樹齢1000年も。神々しい盆栽たちとの出会い
庭園をめぐる中で特に印象的だったのは、蝦夷松 銘『轟』だ。高さ1mに満たないこの盆栽の樹齢は、なんと推定1000年。樹齢1000年って、もう御神木とか天然記念物とかになっている巨木のそれではないか。樹と向かい合った瞬間、神々しさを感じて反射的に一礼してしまった。

幹の下の方は空洞化しているうえ、かつては大きく張り出していたという右半身は枯れて、その一部だけが真っ白になって残っている。こんなふうに盆栽の幹が年月を経て白骨化した部分のことを「シャリ(舎利)」と言うそうな。同様に枝の部分が白骨化した場合は「ジン(神)」と言う。どちらも神仏の名前をあてられているのが非常にしっくりくる。じっと見つめていると、ジブリ映画に出てくるような森の神様が宿っているように思えて仕方がなかった。
『轟』はこの美術館で最も古い鉢で、大宮盆栽村の繁栄の立役者となった職人によるものだという。人ひとりの人生の尺をとうに超えて、この盆栽はこの土地を見守り続けているのか……と思うと、先ほど体験した徐秋成の作品『夢をみる、さいたま、仮に』のラストシーンが改めて思い出されるのだった。

盆栽には様々な種類があって見どころもそれぞれだが、盆栽初心者の筆者にはダイナミックで古色豊かな松柏(しょうはく)盆栽が特に心に迫った。上の五葉松 銘『青龍』なんて、うねる幹が本当に龍そのものに見える!

こちらは真柏 銘『北斎』。葛飾北斎の代表作『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』(新1000円札でお馴染みの高波の浮世絵)を思わせる力強い鉢である。幹の部分がググッと迫り上がる波、枝葉の部分が砕け散る水飛沫のようだ。職人が時間をかけて仕立てることで、生きている樹木にここまで強いイメージを与えることができるなんて驚きである。