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RADWIMPS・野田洋次郎の「作詞」を考察。歌詞集『RADWIMPS論』から紐解く生と死

2025.12.26

#BOOK

理不尽な僕の「生」は続いていく

世界は理不尽で満ちている。どんなに頑張っても心は満たせない。君の心は手に入らない。天文学的な人数に賞賛されてもその賞賛がいつ消えるかわからない。永遠にがんばれと命じられる。がんばっても「オワコン」などと投げ捨てられたりする。そんな理不尽な社会と世界を歌にしている。

『RADWIMPS論』扉イラスト / Illustration by 小山飛日

理不尽さに終わりはない。一瞬忘れることはできてもまた理不尽はやってくる。憎しみも苦しみも虚無も自己嫌悪もまたすぐに戻ってくる。しかしそれでも呼吸は続いてしまう。心臓は動いてしまう。その生の理不尽は、言葉で簡単に抽象化できない。抽象的な言語化ではすべてが虚しくなる。だから彼は、自らの呼吸を表現に使う。

“有心論”の最後は、「君は不在だけど君は心に存在する」という境地を言葉で表す。

この心臓に君がいるんだよ 全身に向け脈を打つんだよ

RADWIMPS “有心論”

存在が心に宿るという表現は、心と心臓を一つに結びつけるメタファーは、ありきたりかもしれない。僕はありきたりだと思う。だけどここで僕らは、言葉を音と共に聴いている。言葉だけを感じ取っているんじゃない。 

矢継ぎ早に息継ぎ少なく歌ってきた声は、息苦しさを伝える。最後の最後。息のギリギリで発せられる声は、心臓が送り出す血液を模する。絶え絶えの声が、血液の運動を擬声する。

<白血球、赤血球、その他諸々の愛を僕に送る>。その言葉が発せられた瞬間、僕の体は理不尽を超え、僕の心は僕を超える。君の愛は君を超える。音と言葉と呼吸のかたまりは心臓の力になり、虚無を無効にする。そしてすべての音が消える。僕の生は続いていく。  

『野田洋次郎 歌詞集 RADWIMPS論』

発売日:2025年12月19日(土)
定価:¥2,640(税込)
判型:四六判
ページ数:400ページ
発行:株式会社KADOKAWA

▼KADOKAWAオフィシャル書誌詳細ページ
https://www.kadokawa.co.jp/product/322506000806

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