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RADWIMPS・野田洋次郎の「作詞」を考察。歌詞集『RADWIMPS論』から紐解く生と死

2025.12.26

#BOOK

息苦しさからの蘇生を呼吸によって具現化する

彼は容赦ないから、時間の経過も容赦なく描いてしまう。最新アルバム『あにゅー』収録の“筆舌”では、時の残酷さを具体的に羅列していく。

ダチの腹に癌が見つかりなんかヤケに食らったり

いつ死んでもいいとか言ってた俺も検査に行ってみたり

小3だったあの生意気な親友の子供は今じゃ

高校にあがり親の金くすねコンドーム買っていたり

このペースで時が過ぎるなら一人ぼっちで死ぬ可能性が現実味を帯びて

人知れずぽつんと死ぬなら夏場は嫌だななんて思ったり

RADWIMPS “筆舌”

野田洋次郎の言葉は死を恐れている。息が苦しいはずなのに、心臓の鼓動に執着してしまう。息苦しい。君を傷つけた。君はいない。許せない。君が許せない。僕が悪いんじゃない。僕が悪い。わからない。とにかく息苦しい。こうした息苦しさからの蘇生がRADWIMPSの楽曲には息づいている。

『RADWIMPS論』扉イラスト / Illustration by 小山飛日

それは、歌詞においてだけではない。文字通り、呼吸によって彼は蘇生を表す。『君の名は』のエンドロールで流れる楽曲“なんでもないや”の、<時のかくれんぼ はぐれっこは もういやなんだ>という箇所が象徴的だ。

「Cadd9→Dsus4→Em7」と記号化できるセンチメンタルなコード進行が繰り返された後、「F→C#dim」へと転調する。安定した予定調和が断ち切られ、「はぐれっこ」の後で一瞬消えた声が、「っはもういやなんだ」と再び現れる。この「っは」は、言葉になる前のブレスだ。呼吸が戻る瞬間に放たれるノイズだ。

その呼吸音が、「もういやなんだ」の切実さに肉体的な説得力を与えている。「時の迷子」でいたくないことを、迷子からの蘇生を、呼吸によって具現する。

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