INDEX
ベースが支えるRADWIMPSの楽曲の情報量
情報量の多さは言葉だけじゃない。演奏もそうだ。RADWIMPSの楽曲はどれも、1つの曲に複数の曲が入っているような印象を与える。
たとえば“05410-(ん)”は、シンプルな8ビートのパワーポップとして始まるが、途中で2ビートの倍速リズムに変わり、さらにはヘヴィメタル的なキックの16分連打に変わる。
“セツナレンサ”、“イーディーピー 〜飛んで火にいる夏の君〜”などの楽曲は、Rage Against the MachineとBUMP OF CHICKENとWeezerと松任谷由実が合体したような、ありえない組み合わせの異形感を印象づける。
そうした異形を支えているのが、ベースの武田祐介のプレイだ。高いフレット位置でメロディを弾き、ルート弾きを的確なニュアンスで弾き、隙間の多いフレーズでレゲエ / ダブ的なリズムを形成し、16分の刻みやスラップによってファンクを感じさせる。RADWIMPSのサウンドの多様さは、なによりベースから産まれ落ちる。

“有心論”においては、最初のAメロにおける隙間の多いメロディ、サビのルート弾き、2番で4つ打ちに乗る16分のフレーズ、間奏でのスラップと、パートごとにスタイルを変えている。この豊かさによって、RADWIMPSにおける楽曲変化は、こけおどしを凌駕する。
言葉と音の情報量。それはMrs. GREEN APPLEやYOASOBIに受け継がれている。細かく韻を踏んでいくリリックも様々な音楽家に受け継がれている。しかし、「容赦なきフィクション」と呼ぶべき野田洋次郎の信仰には、誰も追いついていない。