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“有心論”で気づく、音と意味の追いかけっこ
僕は両極を忙しなく動いている。人類史上最高の幸福と世界史上最悪の絶望を、何度も行き来している。だからRADWIMPSの言葉もひたすら両極へ動いている。
野田洋次郎の歌は情報量が多い。言葉数が多い。メロディは同じでも歌詞はどんどん変わる。サビの歌詞も簡単には繰り返さない。言葉の洪水を、聴き手の脳は受け止める。故に、音に対して言葉の意味を取るのが遅れる。
“有心論”サビの、8分音符で畳みかけるこのフレーズ。
君があまりにも綺麗に泣くから
僕は思わず横で笑ったよすると君もつられて笑うから
僕は嬉しくて泣く 泣く
RADWIMPS “有心論”
君が泣く→僕が笑う→君が笑う→僕が泣くという「僕 / 君」「泣く /笑う」の順列、組み合わせのような行為の連続を、僕たちは素早く流れる音を聴いてからコンマ1秒、あるいはそれ以上遅れて理解する。「泣く」「泣く」と繰り返すときの遅延によって、やっと脳が追いつく。音の把握と言葉の把握とのズレが途中で一致する。その追いかけっこの快感によって、僕らはRADWIMPSから耳を離せなくなる。
明日を呪う人間不信者は
明日を夢見る人間信者に
もう昨日を探してた僕はいない いない
RADWIMPS “有心論”
不信と信が韻律を伴って入れ替わる。2番のサビでは、君の存在と不在が入れ替わる。
誰も端っこで泣かないようにと
君は地球を丸くしたんだろう?
だから君に会えないと僕は
隅っこを探して泣く 泣く
誰も命無駄にしないようにと
君は命に終わり作ったよ
だから君がいないその時は
僕は息を止め 待つ
するとね君は いつでもここに
来てくれたのに もうここにいない
RADWIMPS “有心論”
泣いたと思ったら笑い、笑ったと思ったら泣く。不信から信へ、信から不信へ。君の不在から存在へ、存在から不在へ。2つの極への性急な移動という点で、“有心論”ほどRADWIMPSを表している曲はない。