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岡田拓郎インタビュー 「日本人が黒人音楽を演奏すること」への逡巡と「アフロ民藝」

2025.12.19

#MUSIC

Ras G、Madlibからの影響をミニマリズムの発想で

―その一方で、“Galaxy”のように、ビートミュージック的というか、先鋭的なインストゥルメンタルヒップホップのような曲が入っていたり、アンビエント的なものとは異なる色彩もありますよね。このあたりの要素はどこからやってきたものなんでしょう?

岡田:これは単純に、そういう音楽にめちゃめちゃハマったというのが大きかったですね。Ras Gとか、Madlibとか、その辺りを集中的に聴いていて。やけのはらさんに話しかけたのもまさにその辺りの音楽についておしゃべりしたいなと思ったからなんです。けれど、ああいったものも、かなりアフロセントリックな要素のある音楽だと思うので、ブルースの場合と同じで、やっぱり僕がそのまま真似をすることはできないなと感じていて。というか、順番で言うと、Ras G等を沢山聴く中で、ブルースの他者性についてもう一度真剣に考えるようになったという流れでした。なので、自分なりにビートミュージックの影響を消化するにあたっても、表面上はアンビエント的な静謐さとは違うけれど、やっぱりミニマリズムの発想からアプローチしてみたいと思ったんです。

―この10年あまり、J・ディラの再評価が大きく盛り上がったりもしましたけれど、ああいう動きは追っていなかったんですか?

岡田:あの頃はむしろ逆張りしてほとんど聴かなかったんですよ(笑)。Ras Gを聴こうと思ったのも、そういうインストゥルメンタルヒップホップ再評価の流れというよりは、ファラオ・サンダースの曲のイントロだけがずっとループしていたら最高だろうなと考えたことがきっかけでした。「あ、そうか、Ras Gのビートがまさにそれなんじゃない?」と気づいて。あとは、レコード好きの一人として、過去の遺産がこういう形で引き継がれていくという文化的な部分の魅力が、実感として理解できたというのも大きかったですね。

―サンプリング等のマテリアルな操作の蓄積が、アウラのようなものを逆転的に出現させるという……?

岡田:そういう事も起こり得ると言いますか。

―岡田さんはこれまでも『Betsu No Jikan』でマイルス・デイヴィス作品におけるテオ・マセロの手法にインスピレーションを得た編集を行っていたり、そういうエディット的な曲作りも既に実践していたわけですよね。その経験がサンプリングミュージックに対してより強い関心を持たせることに繋がったんでしょうか?

岡田:それは少なからずあると思います。確かに『Betsu No Jikan』でも、ある曲で録音した演奏を切り分けたり変調させて別の曲で使うようなサンプリング的なアプローチをしていましたけど、改めてJ・ディラをじっくりと聴くと、本当に信じられないようなところからサンプリングソースを拾ってきたりしているじゃないですか。しかも、その使い方が全く定型的でなはない。とにかく、音楽が躍動している。サンプルの編集で成り立っているはずなのに、各音の要素が点で存在するんじゃなくて、流れで捉えられている。マテリアルな現象としては点の羅列で成り立っているはずなのに、点と点の間に濃密な空気がある。これまで熱心に聴いていなかったのもあって、それがすごく新鮮に感じました。

―今回のアルバムには、石若駿(ドラムス)、松丸契(サックス)、マーティ・ホロベック(ベース)などジャズの分野で活躍するミュージシャンが参加していますが 、プレイヤーの皆さん誰一人として同時録音をせずに、パートごとバラバラに録音したそうですね。音を聴くだけは到底信じられない気がします。しかしなぜそういう作り方をしようと思ったんでしょうか?

岡田:これまでの自分のキャリアを振り返ってみても、自分の音楽って、どこかの枠組みにはどうしても収まり難くて、常に何かの中間に漂っているものに感じるんです。だから、今回はそれを改めて自覚した上で、手法の面でも、集団即興に全振りするわけでもなく、かといって、すべてコンピューターで完結させるわけでもない、中間的なものをやりたかったんです。そういう中間性への意識というのは、文化的な次元でも同じで、ブラックミュージックに振り切れることがないのはもちろん、かといって日本の伝統文化に振り切れるわけでもないんです。あとは、完成度という意味でも、振り切れた完全・完璧を狙わないというのも心がけました。

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