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アーカイブを未来に残すには、作家の周囲にいる人たちの協力が不可欠
―映画『ゴジラ』に始まり、ドラマ『らんまん』、そして『当世極楽気質』という舞台。それらを横断して資料が活用されているということにアーカイブの豊かさを改めて実感します。
岡室:メディアは違っても、どれもが互いに資料になり得るのがアーカイブなんです。つまり、『らんまん』もまた後世にとって貴重なアーカイブになっていくわけですよね。ちなみに、脚本も初稿からブラッシュアップを重ねて完成されたと思うのですが、その段階の脚本は都度残すようにされているのでしょうか?
長田:改稿したところが分かるような状態で保存するようになっていたので、それは残っています。
岡室:よかった! というのも、長らくエンパクの館長を務めていた身としては、草稿や初稿もアーカイブとして非常に貴重だと思うんですよ。例えば、別役実さんの原稿もエンパクに数多くお寄せいただいているのですが、几帳面な方で、草稿はほとんどなく完成稿だけなんです。だけど、若い頃の創作ノートや名作『象』に至るまでの準備稿のようなものはあって、本当に素晴らしいんですよね。以前は草稿が紙だったのでご遺族から沢山お寄せいただけたのですが、現代はパソコン作業がメインだからなかなか残りにくいというのもありますね。
長田:現場によって独自の保存ルールがあったり、放送局の管理下にあるものとかもありますね。

―近年の小劇場の若手団体で興味深いと感じたのが、まさに草稿や初稿を観客と共有する取り組みでした。例えば、MEMELTという20代の団体は、物販で上演台本とは別にボツシーンを収めた「ゾンビ台本」なるものを販売していたり……。
岡室:へえ! それはとても面白いですね。
長田:性格によると思うのですが、私は台本の執筆中って自己肯定感が地に落ちた状態なんです。だから、正直なところ「私の書いた痕跡など世に残す価値はない」と思ってしまうんですよ。でも、そういう時に「後々役立つかもしれないから取っておこう」と言ってくれる人がいれば未来は大きく変わりますよね。制作さんであったり、劇団員であったり、優秀なアーキビストが作家の周りにいるかどうかでアーカイブの運命は大きく違ってきます。作家本人はつい「作品に全てを込めたのでもはや語るべきことなどありません」と思っちゃうので……(笑)。これも、私が「アーカイブは1人ではできない」と感じる理由の一つです。
岡室:お気持ちはすごくわかるんですけど、アーカイブ推進者としては見逃せないです(笑)。先日ケラリーノ・サンドロヴィッチさんとの対談で伺ったんですけど、KERAさんは原稿の執筆過程が物理的にある程度残っているそうなんですよ。それがもう演劇博物館としては欲しくて仕方がなくて……。長田さんの作品についても同じで、素晴らしい台本を作家がどう書き進めていくのかを知りたいし、その軌跡も後世に残していきたい。常にそういう思いがありますね。もちろん作家だけでなく、俳優が演技のためのメモや息継ぎ箇所を書き込んだ脚本などもとても貴重だと思います。やはり残そうという意志をもった人が周囲にいることが重要ですね。
長田:岡室先生のお話を聞いて、今、少しだけ「自分の書いたものの痕跡にも価値があるんだ」と認識することができました。
岡室:アーキビストたちの思いが通じてよかった!(笑)
